実に素晴らしい日々だった とうぞく兄ちゃん、と呼ばれ、盗賊王は目を覚ます。子バクがマリオカートの画面を背に、ハンドルを持って立っている。 「りょうは?」 「かいもの」 「アイツは?」 「しごと」 「おまえは?」 「かいばはしっちょうにいったんだって」 「出張な」 ソファから起き上がり、自分もハンドルを拾い上げる。 ゲームが始まると子バクは日本語とも、盗賊王の馴染んだエジプトの母語ともつかない歓声を上げながらプレイする。 「おまえもゲーム、すきだな」 「うん」 盗賊王は負けてしまう。別に弱い訳ではない。しかし、負けることが多い。負け癖だろうか。それとも。 隣の子バクの目は輝いている。 ――ああ、俺がガキの頃とはまるで違う目をしてやがる。 盗賊王は子バクの頭を撫でてやりながら、再戦を申し込む。子バクは喜んで受けて立つ。 ――でも俺は俺の過去を後悔はしてないんだぜ。 今日は楽しんで楽しんでゲームして、いつか、そんなことも話そうと思った。
エイプリルフール拍手SS
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