between machinery eyes and meteor shower




 流星雨。雨が降るように星が降り注ぐのだそうだ。ホームルームの時間に右京先生がそう聞かせてくれた。暖かな縁側に座り、遊馬はそれをそっくりアストラルに言って聞かせる。すると庭を掃いていたオボミが仕事を休止して自分の話を聞いていた。
「オボミも一緒に見るか?」
「ユウマ、ダレトハナシテル?」
「アストラルだよ。ほら、ここにいるんだ」
 遊馬は自分に見えているアストラルを指さすが、オボミのカメラと電子頭脳はそれを認識できないらしい。
「アストラル?」
「水色でツンとしててたまに光って、あとオレのデュエルに口出ししてくんの」
「アストラル? アストラル?」
 オボミは瞳を点滅させ、音を立てて顔を回転させる。
「しょうがねえよな、小鳥たちにも見えねえんだもん」
 遊馬がオボミの頭を撫でると、オボミは急にそれを嫌がるかのように離れ遊馬の周囲をぐるぐると回った。小さな瞳が何度も瞬き空中を調べる。
 ピピ、と小さな電子音を立てオボミは箒を拾い上げ、また掃除に戻ってしまう。遊馬とアストラルは顔を見合わせた。遊馬はちょっと眉をハの字にして笑った。それから日が暮れて寒くなるまで縁側で話をした。十二月の庭木は次から次へと葉を落とす。オボミは延々と庭を掃き続けている。
 夜が更け流星雨を見ると言うと、明里はその記事を書くために部屋に籠もると言う。しばらくは祖母の春が一緒に出て眺めてくれた。
 夜気は肌を刺すように冷たい。庭から見上げる空は街明かりの邪魔があるものの、それなりの星空が見えた。遊馬は春と隣り合って座り、アストラルはいつものように少し浮いた所で空を見上げている。庭にはオボミもいる。
 ピークはまだだったが、流れ星を幾つか見たところで春は中に戻ると言った。
「風邪を引かんようにな」
 着ていた半纏を遊馬の肩に掛けてくれる。花柄のそれに遊馬は照れながらありがとうを口にする。本当はダウンを着た上に半纏はもこもこしすぎていたのだけれど。
 また星が流れる。数をオボミがカウントしている。あまりに寒いせいか、時々関節のきしるような音が聞こえた。
「おいで、オボミ」
 遊馬は呼び寄せ、オボミの身体に脱いだダウンを巻き付ける。そして自分は祖母の半纏を羽織った。
「ユウマ、ユウマ」
 オボミは瞳を点滅させながら言った。
「アストラルハ、サムクナイ?」
 遊馬は目を見開いてアストラルを見上げた。おい、オボミが心配してくれてるぜ?
「私は大丈夫だ」
 寒くないってさ、と遊馬が伝えるとオボミは流星雨の空と自分の間の空間に何度もカメラの焦点を合わせ見えない存在を見ようとした。星はいよいよ雨のように降り注いだ。






2011.12.14 跳ね箸さんからのリクエスト「オボミ」