向こう側にでんわをかける(最後の手段)





もう動かない身体に雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。雨が降り注ぐ。血の味がする。肉が痛む。骨が痛む。血にまみれた手が誇りを汚す。ザンザスの姿は見えない。ザンザスの笑い声は聞こえない。貶す嘲笑いさえ聞こえない。無音が突き放す。絶望の更に底へ落ちる。あの日の誓いを果たし得なかったのはこの我が身。死の足音が聞こえる。遠い雨音のように。彼方の潮騒のように。誓いを果たす最後の術ならば知っている。これが愛でさえなかったと生さえ手放せ!



「スクアーロ」



五体を刻む痛みが己が肉体の存在を、否、生の存在を知らしめた。己の存在。我思う、故に。同時に不在も知らしめた。彼はその肉体の欠損のもたらす痛みをしっている。左腕だ。誓いの証明、決意の証。それはもう根元から消えた。足も、ない。いや、ある。あるばかりで動かない。失った左腕のほうがよほどリアルなファントムペインを伝えてくるのに、足は、神経を電子の一かけらも走っていないかのような不在。もう動かない。剣を持つことが出来なければ。誓いを果たすことが出来なければ。この命など。



「…スクアーロ……」



名前を呼ばれてまで生き延びる意味などない。






まだスクアーロが生存しているか解らなかった頃、書いたもの。

 こちらからお借りしたお題。閉鎖されたようです。

ブラウザのバックボタンでお戻りください。