Twenty four




 雨曝しのポスターの隣で煙草を吸った。これで少しは大人になるかと思ったが、煙草は
幾分も短くならない内に雨に消えた。ランボはそれを路地に投げ捨てた。
 ポスターの女が泣いている。この舞台をランボはテレビで見た。昨夜、眠っていない。
葡萄の載った皿を抱え、床の上でリボルバー片手に蹲っていると急に時間がのろくなる。
何故、生きているのか、普段考えなくてもいいことを考えるハメになった。
 その舞台の番組に変える前に見た、昆虫の交尾。あれの延長に自分たちの行為があるこ
とが信じられない。いや信じ易い。言葉も交わさず、後ろから入れるものを入れて済ます
行為だとすれば、それほどに似ているものもなかったし、だが逆にあれほどに自分の肉体
という存在を認識させられる行為は、あのあまりにも淡々としすぎた交尾とは似ても似つ
かない。汗と、熱と、痛みと。さっきまで煙草を挟んでいた指で唇をなぞる。ほんの少し
吸っただけなのにもう匂いの移ってしまった指。それが濡れた唇をなぞった。指を唇にあ
てたまま、微かに呟く。リボーン。
 最近、眠れない。リボーンの来る夜と来ない夜、どちらが多いかと問われれば、勿論圧
倒的に来ない夜に決まっているのだが、その膨大な夜の過ごし方を最近のランボは忘れた
気分だ。リボーンがヤサの扉を開く。何も言わずに服を脱ぐ。ホルスターがテーブルの上
に置かれる。その瞬間を狙って撃った弾をあっさりと避けられ、弾みをつけてベッドに押
し倒される。あとはお約束の汗と熱と痛みと快楽と。それが終わるころには息も絶え絶え
にベッドに伏し、昼過ぎに目覚めるだけだ。
 そう眠りは快楽の後に訪れる。殺意も捩じ伏せ、なし崩しに名を呼び、溺れる者のよう
にもがいて、ようやく。食いかけの葡萄と芸術的過ぎる舞台のテレビでは眠れない。
 ランボは煙草の匂いの残る指でポスターの女の目尻をなぞった。インクが滲み、破れた
紙が濡れて指に張り付く。眠っていない。頭が始終物足りないと叫んでいる。眠れない夜
はいつも思っている。なにか足りない。なにがだ。リボーンか。リボーンに抱かれれば満
足なのか。違う。そうじゃない。ではこの手で殺せば満足か。きっとそれも違う。指がそ
のまま破れた端を引っ掛け、ポスターを引き裂く。女の顔には斜めに大きな傷が出来る。
そこから覗くのはじめじめと黒く濡れた汚い壁。
 ランボは指をシャツで拭い、ポスターに背を向けて歩き出す。手をつっこんだポケット
には先客があった。煙草を吸えば大人になれると思った。大人になれば少しは割り切った
頭が眠れるだろうと思った。ランボはポケットから煙草とライターを引っ張り出し、後ろ
に放る。路地から飛び出した小さな足音がそれを拾って立ち去ったが、気にはならなかっ
た。
 ビルを伝って落ちる雨水が路上でびたびたと音をたてる。路地は女の顔の傷のようにど
こも黒く濡れている。街灯さえない裏路地だ。ゴミと痩せた負け犬が雨を避ける場所も持
たず、蹲ったまま濡れるにまかせている。ランボが目の前を横切ると、犬の生気のない目
が一度だけ開いて、靴に雨水を跳ねかけられまた閉じた。ランボはそれも無視して歩き続
ける。目は自分の歩く一歩先を見ている。せめてその一歩先、なにかないかと探している。
そんなことをして、そのなにかが見つかった例は一度もない。葡萄も飴玉も違う。ブラン
デーも。煙草も違った。じゃあ、なにが欲しい。
 不意に視線を感じた。ランボは無防備に振り向いた。それはじっと見詰める視線だった
が、殺意はなかった。そんな視線を注いでくれるのは、この世に一人しかいない。自分を
拾い上げてくれたあの手の主。硝煙の匂いをまとわりつかせた。
「ボス……」
 ランボの目は今にも泣き出しそうに潤んだ。街灯も家の灯りさえない裏路地に、その声
は銃声のように重く響いた。
「オレはいつの間にボヴィーノのボスになったんだ?」
 身が竦んだ。ランボは後じさりかけて壁に背中をぶつけた。
 声は続ける。
「それとも寝返ったか。いずれにせよ初耳だ」
「…リボーン」
 気配はすぐ目の前まできていた。しかしただ黒い闇が圧し掛かってくるようで、その姿
は見えない。
「待ち人じゃなかったみてーだ。悪かったな」
 唇が、がちりと歯が音を立てるほど激しくぶつかった。がちがちと歯は音を立てた。探
り当てたとばかりに下唇に歯が立てられる。ランボは痛みに声を漏らしたが、それも低く
くぐもるだけで飲み込まれる。掴まれた髪、腕に捉われた腰。薄く目を開ける。切れ長の
目が自分の目を覗き込んでいる。その目も、すぐ逸らされると思った。が。
「煙草を吸ったな」
 その闇に溶け込みそうな黒い瞳が自分を見詰めていることに気づいたとき、ランボの身
体は震えた。見ている。リボーンが自分を見ている。
「リ…」
 急に理由のない恐ろしさが込み上げてきて、ランボはリボーンの身体を引き離そうとし
た。しかし乱暴に髪を掴んでいた手が離れ、リボーンを押し返そうとしたその腕も取られ
る。手首を掴んだ手がゆるゆると上り、壁にランボの腕を押し付ける。まるで手を繋ぐよ
うに指を絡め、押し付ける。感じるのは濡れた壁の気持ち悪さではない。リボーンの手が
自分の掌に触れたという驚き。掌に触れられただけでランボは肩をすくめ、顔を背けよう
とした。しかしそれを追ってきて離さない唇。
 膝が震えた。雨音さえ聞こえなくなっていた。思わず縋ろうとすると、リボーンの手を
握り締めることになって、再び指の力を抜く。途端に身体は崩れ落ちそうになる。
「う…く……」
 両目が潤む。目尻が熱く濡れるのが分かる。舌が痺れているのは、強く吸われたからば
かりではない。震えて声が出ない。リボーンの手が離れた途端、ランボはその場にしゃが
み込んだ。足が震えている。首がぐったりと折れる。ようやく唇を離されたのに息ができ
ない。と、両頬に手が添えられた。顔を上げさせられる。リボーンの双眸がじっと自分の
目を見詰めている。ランボは小さな声を漏らした。


 暖色の光が部屋を照らし出した。古いホテルの部屋は広くはなかったが、品の良い調度
と柔らかそうなベッドが据えられている。テーブルの上にはワインクーラーにランボの見
たことのないラベルのワインが冷えている。リボーンは伏せられたグラスを使おうとしな
かった。ずぶ濡れで壁に沿うように震えているランボを振り向く。
「来い」
 ランボは微かに首を振った。するとその声はもう一度、自分を呼んだ。
「…来い」
 震えながら一歩踏み出す。リボーンの視線に足が竦む。ランボは俯き、小さな声で言っ
た。
「見るな…」
「…なんだ?」
「見るなよ……」
 両手で視線から自分の顔を庇うように頭をかかえる。しかし視線がその上から自分を見
ているのが分かる。ちりちりと腕が熱い。見るな、ともう一度囁いた瞬間、腕を取られた。
拒む余裕もなく唇が重なる。歯を震わせていると、そこから僅かにぬるい何かが流れ込ん
できた。その香りに、自分の大好きな葡萄からできた酒だと分かったが、口移しされるそ
れをランボは飲み込むことができない。大凡が唇の端から流れ出し、重なった冷たい胸の
間に流れ込む。
 また手が頬に添えられた。口を開けろ、と低く囁かれた。見てる。震える唇をおずおず
と開く。ワインが流し込まれた。冷たいそれが喉を這うと、肩が震えた。震える肩をリボ
ーンが掴む。唇から溢れ出したワインをリボーンのすする音が聞こえる。ワインをすすっ
た唇はそのまま首筋に吸い付き、お馴染みの感触が。しかしランボは多分、怖くてたまら
ない。気持ちよさより、泣き出したくなる感覚が膨らむ。
 よろめくランボの身体は、支えられるようにしてベッドに横たえられた。上から覆い被
さるリボーンの影。何度も顔を覆おうとする手をとられる。
「目を開けろ」
「イヤだ…」
「開けろ」
 開けた視界は涙で滲んでいた。暖色の灯りを背にリボーンが自分の顔を覗き込んでいる。
目の奥まで。その輪郭が次第に滲んで、唇が重なる。
「リボーン…」
 ランボの目からは涙がこぼれ落ちる。
「変…だ…」
 口付けの際に目が合ったことなどない。なかったと思う。まさか見られることがこんな
に違和感をもたらすなどと。いや、自分はリボーンに見られたかったのではなかったか。
十年前から、自分に一瞥さえくれず爆煙まみれに終わらせてきたこの男に、見て欲しくて
仕方がなかったのに。
 リボーンは啄ばむようにランボの唇を挟み、音を立ててキスをする。頬にも触れる。手
が、濡れた柔らかな黒髪を梳く。その間も、その黒い瞳は自分を見詰めている。目を瞑ろ
うとすると、掌が瞼の上に触れて、目を開かせようとする。ランボは観念して目を開く。
涙で滲むリボーンにもう一度、苦しげに訴える。
「リボーン……」
 胸のボタンが外される。それに冷や汗がわっと出た。今まで灯りの下で交わったことな
どない。いつも暗闇の中で獣のような息を耳に、汗に濡れる熱い身体を全身で感じるばか
りだったのに。シャツの前が開く。自分のネクタイを緩めようとするリボーンの手をラン
ボは掴んだ。見下ろす視線が訝しげに問う。ランボは強く首を横に振る。
「でっ、電気がついてる…」
「だから?」
「イヤだ。電気、けっ、消してから……」
「今更、見られてなにが恥ずかしい?」
「違う…」
 するとリボーンは笑ったようだった。ふと視線が解かれる。急に断ち切られたそれに安
堵する前に、目の縁に触れるもの。
「リッ」
 リボーン!と呼んだとき、熱い舌はランボの瞳の側を這っていた。ワインの匂いのする
舌。
「開けておけ」
 眼球にそれが触れたなどと信じられなかった。でも確かに、涙の膜が揺れて。ランボは
目を見開いたまま、リボーンの腕に爪を立てる。
 再びリボーンの目が自分を見つめていた。速い息が口を出入りする。頬に手が触れてい
る。
「どうだ」
 ランボは唾を飲み込んだ。そして囁くように、一言、言った。
「気持ちいい…」
 リボーンが満足げに笑って、目尻にキスを落とした。それから目を合わせた。リボーン
の目。切れ長の、鋭い。鉱石のように黒い瞳。そこに自分の瞳が映っているのだ。熟れる
前の果実と同じ色をした瞳も。赤くなった目の縁も。浅く呼吸を繰り返す唇も。今は、確
かに。
 ランボは口付けを、瞼を閉じずに受けた。


 シーツにはワインが染みているはずだが、今は確認のしようがない。高い声を漏らしな
がら、ランボは懸命にリボーンの目を見ようとする。うっかり陶酔して目を瞑ろうものな
らリボーンが噛み付く。抱えられた足が宙でゆらゆら揺れるのも、少し目を転じればモザ
イク修正したくなるような場所も容赦なく見える、暖色の灯りの下、リボーンの顔をしっ
かりと見える。揺れるたびに像はブレるが、微かに汗の浮いた額や、薄く笑った唇の端や、
時折眉間に寄る皺も。何度してもすまない口付けをまた繰り返し、あまりにも見詰め続け
ることに目の奥が痛くなる。
 交わっては涙を流し、その涙をリボーンが舐める。ランボは気持ちいいと繰り返す。否、
何度囁こうと、それは初めての言葉のようにうっとりと囁かれる。視線がとろんと溶け、
唾を飲み込み、這い上がる快楽に溺れそうになりながら口にする。果てては睦言のように
囁く。自分の上で荒い息をつく殺し屋に。たった一つのピロートークがどんなに芸のない
ものだろうと関係なく、シーツに染み込んだワインよりも惜しげにリボーンは囁くランボ
の唇を吸った。
 果てては少しの食事。濡れたまま脱ぎ捨てられた服が床の上で、路上の犬のように蹲っ
ている。しかし着るものは必要ない。ベッドに腰掛け、ワインとチーズと、固いパン、冷
めたステーキ。垂れたソースがランボの顎に血のように滴る。しかしリボーンの唇は食事
の際さえ汚れないのに、ランボには噛み付くことさえ許した。本物の血が滲み、ランボは
急に叫びだしたい衝動に駆られ、ベッドの上にリボーンを押し倒す。上に屈みこみ、横た
わった胸に手を置いて、滲んだ血を丹念に舐める。そのまま腰の上に跨って、また交わっ
た。古く、木の撓んだ鎧戸の隙間から昼の日差しが、白くランボの胸を照らした。所々鬱
血した胸にリボーンは手を這わせる。ランボの息が乱れる。乱れ、また目を涙を潤ませた
ランボだが、その視線はしっかりとリボーンに繋げられている。リボーンが唇を歪めて笑
う。ランボは手を伸ばし、キスを求める。その手が絡め取られ、上体を傾いがせたランボ
の頭をリボーンは抱え寄せる。泣きそうな目に口付けると、掠れた声が、リボーン、と呼
ぶ。それからようやく唇を重ねる。涙が頬に落ちた。
 鎧戸から射す光が弱まり、黄昏のざわめきがぐったりと横になった耳に届くころ、リボ
ーンはランボを抱え込んだシャワー室でもう一度、ランボを存分に泣かせた。落ちてくる
シャワーに視界を遮られながらランボはリボーンを見詰める。癖の酷い黒髪がシャワーに
打たれて水滴を滴らせている。ランボが手を伸ばし、その髪に触れようとすると、リボー
ンが横目でその手を見た。それからランボを見た。シャワーの下でキスをした。触れたリ
ボーンの髪は硬い。ランボは何度もそれを握っては離し、離しては握り、繰り返す。と、
強く引きすぎたのか、リボーンが眉をひそめた。
「あ…」
 ごめん、という素直な呟きが唇から漏れる。リボーンはランボの額に張り付いた濡れた
前髪をかき上げ、キスを落としながら言った。
「今日は、赦してやる」
 シャワー室を出ると、リボーンは裸に銃を一丁持って部屋の扉を開けた。部屋の前には
紙袋に包まれた服が届いていた。リボーンは黒いシャツをランボに投げて寄越した。リボ
ーンの服はちゃっかりとクリーニングされて届けられている。シャツの袖を通すリボーン
を、ランボはベッドの上で真新しいシャツを抱いたまま見ている。
「なあ…」
 声をかけたが、ランボはその続きを口にすることができない。どうしてリボーンがこん
なにも自分を見てくれたのか、その答えはどうしても知りたい、同時に知るのが怖い。ま
さか愛人として自分がランクアップしたとは考えにくい。すると、どうせリボーンの気紛
れに付き合わされたというのが妥当な線だが、本人の口からそうとは聞きたくなかった。
聞けばきっと、この目が真っ赤に腫れ上がるほど泣いたこの二十四時間が色褪せてしまう。
それどころか、いつもの情交後より落ち込むに決まっていた。
 俯いたままのランボにリボーンの近寄る気配がした。
「昨夜が…」
 言葉はそこで途切れた。ランボは顔を上げた。リボーンは口元を手で覆い、眉間に皺を
寄せていた。ランボの視線に気づくと、その皺も、口元の手もすぐに消えた。ランボは問
い直す。
「昨夜…?」
 リボーンは鼻先で笑うと、ランボと目を合わせたまま、互いの唇を触れさせた。押し付
け、押し返す弾力。僅かに濡れる。リボーンは踵を返すと、テーブルの上の中折れ帽をと
った。それを目深に被る仕草に、ランボは殺し屋の鋭い視線を想像した。
 扉を開け、一歩踏み出した瞬間、リボーンが振り返った。銃口が正確にランボの眉間を
狙っていた。ランボの狙いは一瞬遅れていた。マットの下から取り出したリボルバーは、
リボーンの銃口に一瞬遅れて相手の心臓を狙った。
「ランボ」
 その唇が名を呼んだ。端が歪むように持ち上がる。ランボが拳銃から手を離しホールド
アップすると、扉は閉まった。銃口は最後までランボの眉間を狙っていた。
 ランボはそのままベッドの上に倒れこんだ。そして一晩、ワインの染みたシーツに頬を
押し付け、夢も見ずに眠った。


 翌朝、笑顔の老フロントマンに見送られホテルの外に出ると高級車の扉を開けて山本が
待っていた。
「乗れよ」
「……いい」
 ランボはすっかり掠れた声で短く跳ね除けると、顔を真っ赤にした。背を向け歩き出し
たが、山本の声が追い討ちをかける。
「そんな身体で街中ふらついてみろよ。速攻餌食だぞ」
 それで大人しく助手席におさまった次第。
 山本は朝早いのに機嫌良さそうに運転する。たまに黒も似合うじゃねえか、とか、でも
やっぱりお前って言えば牛柄だな、とか話し掛ける。ランボはひたすら無視を通したが、
腹減らないか、の言葉には心が揺らいだ。
 結局、カフェでサンドイッチを頬張っている。よっぽど腹減ってたんだな、と山本は笑
い、ほら、と箱を一つランボの目の前に置いた。
「……んむ?」
「食ってから喋れよ。うちのボス、以下オレとか気乗りしてなかったけど獄寺から」
「な…なんだ?」
「一昨日の夜、誕生日だったんだろ」
「へ?」
 ランボは目を丸くして固まった。山本は箱の蓋を開け、別にお前みたいに爆弾は入れね
ーよ、葡萄、葡萄、マスカットもな、と取り出してみせる。ランボは驚き硬直した指で自
分を指差した。
「オ、オレが? 誕生日?」
「ん?」
「誰が、そんな……」
 言いかけて口を噤む。一昨日の夜? 誕生日なのに、一昨日の夜と山本は言った。眠れ
なかった夜。煙草を吸った。大人になりたかった。ボスが自分を拾ってくれた日じゃない。
その日はカレンダーに印をつけている。一昨日の夜。雨の降った。暗い夜。日付は…。
「よく五歳児と赤ん坊がバーに入れるよなあ」
 山本は笑う。ランボは俯いた。葡萄が一房、皿の上に盛られて差し出された。瑞々しい
深い紫。鉱石のような美しい色。ランボはそれを一粒抓む。皮を剥く指先が果汁に濡れた。
それを舐めるように粒を口の中に入れた。
 甘くて、美味かった。
「…リボーンは……」
「覚えてたんだろ」
 山本はあっさりと言った。あまりにもあっさりしていた。
 朝の光が射す。眩しさにランボは目を細める。思わず震え出しそうになる唇を思い切り
横に引き結ぶ。それでもともすれば吐く息は熱かった。だから口一杯に葡萄を頬張った。
向かいの席では山本がそんなランボを見ないふりをして、通りを行く女たちに手を振って
いた。





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