「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト」感想



あまりたくさん音楽関係の映画を観ている訳ではないくせに何を言うかと言われそうだけど、ま、ごく個人的感想を述べる場ですのでご寛恕いただきたい。
ということで、ここのところ観る音楽関係の映画がどうも不作であるなあ。
『グランドピアノ』ばりにクソ映画だったら妄想に満ちた感想も書きようがあるのですが、今回の映画、観ている最中から、あー、なんつーか普通だなー、という感想だったのでした。
うーん、二時間かけてこれかー。
うーん。

パガニーニが悪魔じみたヴァイオリニストであったことは、クラシックに明るくない私でもうっすら知っていることであり、その映画だというのだから、まあそこそこ期待して行った訳だけれども。
期待外れかと云われれば「全然駄目だわ!」と大声で言うほどのものでなし。
面白くなかったのかと云われれば、面白さのパターンはしっかり押さえた物語ではあるし。
そして私は浅学にして知らなかったのだけど製作総指揮であり主演でもあるデイヴィッド・ギャレットという人は凄い人のようであるし。
演奏の様子にケチをつける気はさらさらない。
登場人物も遊び心のあるキャラクター付けだと思う。
しかし映画としては普通というか、タイトルやポスターから期待するほど胸を突き刺す何かがない。
可もなく不可もなし、と言うよりはひたすらフラットに「可」な作品である。

そんなストーリーの中で唯一の癒しがウルバーニである。
悪魔だ。
パガニーニの目の前に現れるシーンは、まんま『ファウスト』である。
見た目もクラシックにスマートな悪魔的で非常に良い。
最期を目の前にしたパガニーニを門の外で待っているのも良い。
とにかくウルバーニが良かった。
この悪魔がいなかったら、私はたとえ演奏が良くても途中で寝ていた可能性がある。
だってパガニーニ、狂気っていう割りに普通の駄目男だもの…。

あとロンドンの指揮者とその娘である歌手。
ああ、ジョンの娘がシャーロックね…。
Wパロでも大して萌えなかったから、やっぱりホームズとワトスンは相棒に限るってことかな。

やっぱりウルバーニだこの映画の個人的見所は。
「私は悪魔ではない。私は従者であり、お前が私の主なのだ。」
私ですねえ、年の差CPって結構弱いんですけど、この老いた方が若い方に尽くすのも好きなんですよ。
だから演奏会でパガニーニにウルバーニの影が重なる演出、あれラブシーンな。