「ウルフ・オブ・ウォール・ストリート」感想 観た後の第一声は「面白かったー!」ですが、帰り道にじわじわ疲れる映画でもありました。 頭から尻尾まで3時間みっちり高濃度の狂乱の嵐。 科白はファックの連続。 登場人物のほとんどが中指を立てて罵り合い、頭から金とセックスとドラッグに溺れる話。 …と結論づけてしまっては「面白かった」の第一声は出なかったと思うので、もうちょっと。 洋画を観る時、字幕か吹き替えか悩みますが、これは原語が聞こえる方をおすすめするというか…吹き替えはないのかしらね、現時点で。 ここで突然ながら舞白王太郎の『ディスコ探偵水曜日』より引用。 「日本語にしよう。英語だと罵り語が多くなる」 「What the fuck in the fucking world are you fuckin' doing in Ja-FUCKING-pan?ってか」 この言語感覚なんですよね。 呼吸するようにfuckという言葉が口をついて出る。一つの単語の中にさえ挟むんだもの。 今、wikiを見たら科白の中で「fuck」が506回使われているらしい。数えたんだ。 怒涛の科白という心地よさはある。 主人公による社長演説のシーンが何度かあるけれども、気が付いたら口がぽかーんと開いていた。 時分が目の前の狂騒に加担したのではないかと一瞬ヒヤッとしたほどだ。 このシーンは自分でも科白を読んでみたいと、映画を観ている最中から思わされた。 それは「仕事楽しい?」という問いにも繋がる。 あの職場は楽しかったろうなあ。 別に仕事中にドラッグや乱交をしたい訳ではなくて、全員が目的に向かってハチャメチャに走ってるところが。 まずトップが空気摩擦で服が燃え尽きてもなお走る勢いで率先して突っ走ってるんだもの。 馬鹿騒ぎの熱にうかされているだけだと言えばそれまで。 でもあの社長演説に少なからず心を動かされた人はいたと思うのよ。 あれも品がいい訳ではないけれども、この映画を「でも、面白い映画だったよ」と言わせる原動力の一つだと思う。 そんで「星条旗よ永遠なれ」の音楽と一緒にストリッパーがどーっと押し寄せてくる。 あれいいよなあ。 多分、アメリカ、ニューヨークだから似合う光景かもしれない。 みんな薬物と淫行に耽りつつもしっかり仕事して、自分の所属する会社が好きだったんだろうなあ。 (個人的に集団の結束と信頼が欲しいみたいな話になってしまった。 でも自分の職場が好きだ、というのを他に強く感じた映画と言えば「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」。 クリスマスパーティーで全員が東側の歌を歌うシーンが、この人たちスパイで同じ組織で仕事する仲間なんだなというのが楽しい雰囲気と一緒に伝わってきたから。) こういったシーンを見ながら何度、日本の接待滅べ…!と思ったことか。 ゲップが出るほどセックスに溢れた映画でもあるけど、セックスシーンを見てて楽しくはあった。 物語として見ているから、かな。 セックス依存症の男が主人公の映画「シェイム」を紹介した際、小山薫堂と安西水丸が「見ていてシたくならない…」「楽しくない…」と言ってて、確かにそういうスイッチは押されないんだけど、描写としてはとても好みだったのと同じようにね。 している人間が楽しかったり、トチ狂ってたり、破滅的な気分だったりする、その描写だったから。 描き方という観点から、まず楽しい作品だったのかも。 主人公が画面のこちら側への語りかけを現実の延長上でやるシーンは予告でも使われていたけど、ノリが心地よいよね。 見終えて「シェイム」(セックス映画)と「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」(科白を再現したくなる映画)と今作品の3つを並べてどれが好きかなって言ったら3番目にきちゃう映画なんだけど、まあそれは個人的な好みであって、面白い映画だったなあ、が一番の感想です。 誰かこういう狂乱をきっちり描ける人が描いておくべきだった作品として成功している(と思う)。 観た後は「ウォール・ストリート」を観て老ゲッコーに会いたくなったけどね! 肉は満たされた。次は精神を満たそう。 |