「ジャンゴ 繋がれざる者」感想



始まった瞬間から、ザ・映画、という映画である。
目に痛い程の真っ赤な文字がスクリーンに出た瞬間から、「あ、そういえばこれはタランティーノ映画で西部劇だった」と思い出しました。何を観に来たつもりだったのだ…。
何、と言えば映画館で見た特報の映像がSBRの12巻表紙を思い出させたからなんだけど。

寒いが実り多い冬…、二人が賞金稼ぎとして組んだその一冬ががメインディッシュだったとは言え、もちろんその後が面白くないということはない。
ただし相応の覚悟は必要だったということだ、R15+指定は伊達じゃねえ。
基本的には銃で戦うのだが、この映画が同時に描く奴隷制度の流れの中で奴隷デスマッチというものが登場する。
互いに生身一つで相手を殺そうとするときのグロテスクさと、そこにかかるエネルギーの吐きそうなほど噎せ返る熱気。
武器の発明とは効率だけでなく、もっと心の理想とする形で殺したいという精神的なものの反映なのか、と考えた。
小説を書く上でも時々考えることだけど、人間を殺すということは実に骨が折れる。
傷つけることと絶命させることは違うからだ。
命を絶つ過程でどれだけのおぞましき醜悪を経るのだろう。
先日の日記において、バトロワの桐山を演じた安藤政信のインタビューを引用したけれど、人が人の命を奪うということは確実に精神を損ね魂を摩耗させるのだろう。それが生身に近づけば近づくほど。だから武器は必要だ。だから銃は進化するのだ。

上記のようなシーンをとっても血と肉に妥協しないタランティーノです。
銃撃戦も鉛玉の雨というより鮮血の雨です。
容赦なしですが、その容赦なしが、ただグロいのではなくて、実に、そしてきっちりと映画的エンターテイメント性をもって描かれている。
とても映画的でありながらリアルな血肉の匂いがする。
でも最後は爆発だよねー。映画にカタルシスは必須…いや、カタルシスを与えることができるのは監督の甲斐性。物語をはぴえんに導けるのは作者の甲斐性だ。というわけでこの時代にダイナマイトがないとか気にしない。

が、今、この時期に観に行くということはそういう下心である訳で、11人の男戦実写版を堪能。
あと#86の扉絵がリアルに見られるから。おうふっ、てなるから。
寒いが実り多い冬…もうちょっと長くてもよかったんだぜ……。