「ドラゴン・タトゥーの女」感想



甲乙つけ難しとはこのことであるな、と。

一昨年に感想を書いているとおり、まず本国スウェーデンで映画化された「ミレニアム」を見ているのですが、結末を知っていて尚楽しめる作品となっています。
ディテールや展開の持つ若干の幅という違ういが、どれもいい作用をしています。
ストーリーそのものは原作どおり、富豪一族の少女を誰が殺したのか、謎を解き明かすよう主人公は依頼され、今や世界的ヒロインとなったリスベットもその事件に関わっていく、というもの。

今回のフィンチャー版は、いい意味でハリウッド的だったと思います。
同時に「ミレニアム」は確かにスウェーデン映画だったのだと実感。
前回スウェーデン版を観た際は、最後がそれなりに胸のすく明るいラストシーンだったにも関わらず、観客は事件の真相の重さを最後まで引きずらざるを得なかった。この重苦しい部分というのは、スウェーデン映画だからこそ描き醸し出すことの出来た部分かと。
フィンチャー版はその重苦しさを上手くエンターテイメント的に昇華し、ああフィンチャーらしい映画だなあ、という感じで、だからと言って軽くなってしまったというのではなく、そのフィンチャーらしさでラストシーンをそう持ってくるか…!という。
後味がいいばかりではない、というのが両作共通であり、だがその味わいはそれぞれに違います。

全く違う作品になった訳ではありません。
どちらも「ドラゴンタトゥーの女」であり、だが確実に違う作品となった。
折角だから両方を観られることをお薦めしたいところ。
それは勿論描き方、展開、映像美、色々あるけれども、どちらのリスベットもとても魅力的なのが理由の一つ。

リスベットは映画界に新風を巻き起こした新ヒロイン像であり、世界中にファンも多いとの話ですが、いやあスウェーデン版であの強烈な姿を見せつけられて、今回のルーニーも素晴らしい。
今回はリスベットの心の内側は今でも柔らかいのだということを表す描写が丁寧で、観ていて、こう、満たされる気がしました。
特に前の後見人とのシーンはとても見てみたかったシーンなので。

あとダニエル・クレイグのブルムクヴィストは格好良いですね。
なんか…もう…好みすぎた。

この二人のベッドシーン、めっちゃモザイクかかっていたのですが、劇場でモザイクを見たのは初めてで少しうろたえました。
R18の「シャネル&ストラヴィンスキー」もぼかしだったと思うんだけど。
カメラが引いても尚かかっていたモザイクに、なんか、そんなに隠したいものって何なのさ、と物凄く気になりましたね。
映画が映し出す裸が好きですが、この作品のそれもすごく好みでした。
まあベッドシーンもあったけれども、ブルムクヴィストがパンイチでPCの前に座っているシーンとか、辛いことがあった後のリスベットがシャワーを浴びているところとか。

フィンチャーは2と3も映画化するのかなあ。
こちらはスウェーデン版も未見なので、近々観る予定です。