「悪夢探偵」感想 「あっ、いまタッチしました」 予告編でこの科白を聞かなければ、劇場に足を運ばなかった。 塚本晋也作品だからとて、全てを観るわけではなく、観ているわけではなく。 そこへ安藤政信という贔屓の役者が入って、決め手はこの科白、と。 漠然とした期待の他は、これがホラーだとかも特に意識せず チケットを手に、後ろから2番目中央の席に腰を下ろした次第。 今まで監督の作品で鑑賞済みのものは『鉄男』と『六月の蛇』。 変態だ変態だと言われていて、私もこれは変態だと思います。 あと愛。やっぱり愛。愛という言葉って許容があるから、何でもかんでも ぶち込んじゃうけど、愛だと思うんだよなあ。 で、今作品はどうなのよと。 『鉄男』が暴力、『六月の蛇』が淫愛で観客をぐりぐりと抉ってきたとしたら 『悪夢探偵』は? 死。 恐怖という名の音。死と言う名の色彩の奔流の中で 別に正気など保っていなくてよい。 ああ、鑑賞後はぐったり疲れた。 頭痛くなりました、いつものことながら。 なんで生きているんだろう。 自分がいなくったって社会は、利益だか崩壊だかを求めて回り続けるのにさ。 自分がいなくったって、存在し、そんでいつかは滅びるのにさ。 人類が滅びて地球が太陽に呑まれて燃え尽きた太陽を包む宇宙の力もいつか尽きるのに あくせく、あくせく、……ったく、やめていいんじゃねえかなあ。 と思った瞬間に、彼はきっとタッチする。 でも、その自分の生の終末を目の前にして、どうしてこんなに恐怖感が湧き上がるんだ? この恐怖こそが、この映画の中の愛のような気がするよ。 hitomiが主演格だとか、そういうワイドショーが騒いでたのは ご存知の通り、如何でもよいので、一度見ておけよこの痛みを。 恐怖と言う音の奔流の中で自分も叫びだしそうな愛を感じろよ。 駄目な人も多いと思うけど、 年一くらいで、この気持ち悪さを体感しとくのは悪くないと思うのね。 あと表現というか、ストーリーというか、夢の層(相?)の話。 重要な舞台は夢の中であるので、勿論、これに触れずにはおれないのですが、 特に後半の、霧島がゼロに電話した後の夢。 霧島とゼロと影沼が、3人の夢の中を移動すると言うか、 3人それぞれの夢の相に存在する、そのどの夢が誰の、とか書こうと思いましたが 野暮な気がするのでやめました。 さて監督、今回も素敵な肉体っぷりでしたね。 鍛えてえなあ、とか思いました。 「遊ぼうぜえ!」ってアンタ、楽しいんだろうなあ…。 |