「インセプション」感想



予告で、コップの中の水が傾くのを見てから、これは観に行こうと決めていました。
結果的に、二度、観た。
知り合いは、予告で見所が全部出されてるんじゃないかと懸念していたけれども、予告を見たことによって本編の面白さが損なわれることはないと思います。視覚的見所は確かに予告で流れているようなものだけれども、この映画の面白さは視覚効果だけに因らない。重要なのは心理フェイズ。これ、結構長い。

相手の脳に直接侵入する、と言うより、相手と夢の世界を共有することによって情報を引き出す、あるいは映画のタイトルどおり植え付ける(インセプション)という話。同じく夢を扱った映画では『悪夢探偵』があるので、それを思い出してみるに、後者が難解である。『悪夢探偵』は、ヒントは与えているけれども、目の前の景色が誰の夢の相なのか混乱する。そういう混乱具合が面白い映画ではある。
で、今作品は、夢の階層に関しては分かりやすい。その潜る方法、目覚める方法が面白いんだよねえ。
主演が世界の王子様プリオ様ですが、タイタニックもロミジュリも、彼の出演作はことごとく観ていないし、そんなに思い入れもないから、だからかなあ、と思っていたのが、とにかくアーサーが格好良くてだな。予告だと、ぐるぐる回るホテルの廊下でアクションしてる細身の彼ですが、他の人の感想を見てもやっぱりアーサーが格好良いというのが多い。功労賞はユスフもだと思うけど、無重力の貴公子の名は彼のもの。「あいつは想像力が足りねぇよぉ」とか仲間から言われてたけど、パラドックスの利用とか、そういうスマートさがいいよね。
あと渡辺謙ですよ。格好良い。どれくらい格好良いかと言うと、安上がりだからってちょろっと航空会社を買収しちゃうくらい。

早々とコトイチを決めるとしたら、これの前に観た『ザ・ウォーカー』よりもこちらが推せるかな。矛盾が少ないし。いや、あれはあれで、私は納得してますが、ツッコミに対して思いやり的なフォローしか出来ないので(フォロー:そこは神のお導きですよ)。
コトイチとして推すなら、あのラストをどう捉えるかという話になりますが、作り手として私はああいうやり方するよなあ、と思いました。というか、以前、リボーンで長編を書いた時に、最後の部分を曖昧にしたまま終わらせたんですよ。ハッピーエンドだったのか、バッドエンドだったのか、こちらでは明確に提示しないやり方は、作り手の照れなのか、甲斐性のなさの表れなのか。それが効果的な作品もある。私は、これは、このラストシーンでよかったと思う。何故、曖昧なままにするか、私の、作り手としての気持ちを書けば、どちらとも取れるものを提示した上で、なお受け手にはハッピーエンドを選び取ってほしいという期待があります。だから、この映画の終わり方は優しかったと思う。コマの軸がブレる描写はあったのだから。

ところで、エディット・ピアフはあのチームの誰の趣味だったのかね。コブかな。アーサーかな。
アーサーだな、多分。