「ザ・ウォーカー」感想



夜勤から帰ってきた母が突然、観に行こうと言い出したので予備知識なしで出かけました。今では、そのことに感謝する。この映画を観れたことも、予備知識がなかったことも。
原題は「THE BOOK of ELI」。

観に行く前に、黒人俳優で誰が好きかという話をしたのですが、母はデンゼル・ワシントンが一番らしい。この映画の主役です。
帰りの車の中で、手放しには褒めなかったけど、本当はとてもこの映画を気に入って、私もかなりデンゼル・ワシントンが好きになりました。格好いいオジサンって本当にいいよね! しかも、その多くは斬り殺したんだねえ。殺陣のシーンがいいんですよ。格好いい。後半、銃撃も増えるのですが、そこもいい。こっちまで興行がこない「トライガン」のかわりに銃撃戦を楽しませていただきました。荒野の真ん中にぽつんと建つ一軒家が、銃撃とガトリングの弾によってボロボロになる様は圧巻。派手な爆発より、壁にあく無数の穴の方が実は魅力的だ。
アクション映画としては北斗の拳(世界観)+座頭市(殺陣)+トライガン(銃撃戦)を一つの映画の中で楽しめる。

この映画、好きです。何度も見返すということはないかもしれないけれど、とてもいい。要因の一つは、映画の色。クロマティックB&W(白黒フィルムをカラー現像したもの)っぽい色彩で全編進行します。この色好きだあ。青空以上に青空が見える。
それと、何と言っても、一冊の本を巡る争いだということ。タイトルにもあるとおり、例の、世界のベストセラーなのですが、ここに仕掛けられた最後の意外性も、久しぶりにいい裏切りを味わった。
死の灰の降る冒頭から始まり、嫌いなシーンがほとんどない。アクションって、もう食傷気味かと思ったのですが、これはとても面白かった。いいSF小説になりそうだけど、うーん、ノベライゼスされても読まないかなあ。アルフレッド・ベスター(1913-1987)が書くんなら読む。

タイトルと、内容と、オチのシーンががっちり噛み合っている。この映画はアメリカで作られたにふさわしくエンターテイメントであり、アメリカらしいエンターテイメントであり、しかもそれ以外の人間にも実に腑に落ちるいい映画作品だったと、ベタ褒めして終わるのもアレなので、恒例の蛇足。
ゴールデンゲートブリッジを見ると、フルハウスのテーマが流れるんだよね。あそこまで爽やかな景観じゃなかったけどね! でも、脳内でフルハウスのテーマが条件反射で流れようが、あのシーンはよかったなあ。渇きが一瞬にして癒された。