「パーマネント野ばら」感想 サイバラ作品の映像化は毎回期待する。とは言え、一番好きな『ぼくんち』にガッカリした口なので(これは単に監督と趣味が合わない。壊滅的に合わない。他作品でも合わない。あとなんでかのこが二太の母親になるんだ)とカッコ書きで愚痴をこぼすくらいなので、今回はどうなるのだろうと期待半分、不安半分。原作を読んだのは一年くらい前で、その時から結構好きな部類だったのですが、さて本番は如何と思ったら、映画になったこれは好みの中心に直球どストライクでした。 女の映画と表現してもよいか。 同じ表現を用いるならば予告で『FLOWERS』という日本の美人女優豪華競演(共演と言うよりこちらがよいだろう)、日本の映画シーンを辿る映画もあるが、まああっちが正統派と言うか、誰でも見れると言うか、キレイ系と言うか。 つまりこういう例を出したからには、この映画はある程度のクセがあり、やや人を選ぶものかもしれない。銀幕上で赤裸々にちんこを連発する冒頭からもそう言っていいだろう。そういうの嫌いな人はいるしなあ。 だがこの二作品を比べたとしたら、こちらが断然好みだ。もう片方、まだ観てないけど。夏木マリや小池栄子がああいう役で出演するというだけで、信頼出来る。(主役の菅野美穂は、観終わってから、彼女がなおこ役でよかったと本当に思った) セックス(性、という意味も含め)も、流血沙汰も、泥沼の愛も、嘘も、裏切りも、酷い男も、貧乏、日常、現代日本の一般生活イメージより若干低い層を描いているのですが、映画全体に涼しい海風が吹き抜けるようなきれいさがある。主人公のなおこの清潔感が映画の空気になっているからだろう。彼女の清潔感は、彼女の心の中の空洞でもある。そこには海風が吹き、波の音が響く。 なおこの周囲の女性は実に容赦なく赤裸々だ。母のかずこ、パンチパーマのおばちゃん達、みっちゃん、ともちゃん。男を愛しては捨てられ、捨てられては泣いて傷ついてもうボロボロなのに、また男に惚れて、ホテルにはたきこむやら、金せびられるやら、車で轢くやら。恋ってこんなに奔放にばんばん出来るものだったっけ、と振り返っちゃうけど、そんな恋に彼女らを導いているのは、自覚的な女という性だろうか。パンチパーマのおばちゃんらは、どう見ても更年期もとっくに過ぎているが、今でもれっきと女だ。恋の噂は今でも大好物、パンチパーマは美の表れ。 つらつら書いたのですが、やっぱり終盤になって露わになる喪失が、この映画の心地よさだろうか。この映画で私が感じたきれいさ、美しさはどれも透明な感じで、それはここに繋がっている。なおこの恋人の設定に書き加えがあったのは、成功だったと思う。 うーん、好きな映画に言葉を費やしすぎるといけないな。サイバラの得意な叙情感とギャグの空気を上手く描いています、くらいで留めておくべきだったかもしれん。 最後、改めてこれだけは言っておこう。江口洋介かっこよかった。 |