「NINE」感想



マザコンで、娼婦への初恋が忘れられなくて、奔放な愛人が欠かせなくて、看護婦のような妻が手放せなくて、スターに毎回恋をして、女に甘えて、イイ女、イイ女、イイ女、イイ女、全部口説いて、全部欲しくて、なんて情けなくて、ずるくて、男で、ああ本当にイタリア男で!

初め、映画館のちらしで出会った時は、もうミュージカルはいいや、と思ってました。(というかこれ、毎回思ってるんだけど)。しかし予告編を目にしてしまったら、もう見ることが決定した。見ざるを得なくなった。あの時点から虜だった。特に「シネマ・イタリアーノ」! 見終わったらその足でサントラを買いに行くことは分かっていた。『シカゴ』の時のように。

実際、劇場の椅子に座ると、もう、何故だかオーバーチュアの時点から涙が出てきて、自分でもなんで泣いているのか分からない。
実際にはドラマ部分が結構重くて、うおお、と思ったのですが、しかし映画のラスト、女性が次々に現れてグイドを見守っているシーンを見て、やっぱり許してしまった。

いや、許してしまったというか、何と言うか我々作らなければ(書かなければ)やっていけないのですよ。それへの共感? グイドってほんと男として最低だなと思うけれど(奥さんを口説いたのと同じ台詞を聞いた時には「無意識ってか!」と本当に呆れたが)、でも映画を作らなければ(私は小説を書かなければ)人生はないんですよ。

まあ、そういうのは置いといて、目当てだったミュージカル部分の感想を。
そもそもオーバーチュアから泣いたくらいなので、全部好きなのですが、そのたびに、ああ女っていいよなあ、と思いました。いいよなあ、というか、女だなあ、女だよ、と書き手視点だか、自分の人生視点だか、とかくうなずいた。
基本的に勢いのあるのが好きなので、愛人との電話「ア・コール・フロム・ザ・バチカン」なんかの女だなあという声も好きなのですが、やはり娼婦サラギーナの「ビー・イタリアン」。そして何より、今回書き下ろされた「シネマ・イタリアーノ」!
ファーギーかっちょいい!
ケイト・ハドソンめちゃ可愛い!!
これ歌いたい。歌う。っていうか歌う!
帰りの車中でひたすらリピートしていました。

「シャネル&ストラヴィンスキー」の時も、愛と人生について考えたけれど、これはミュージカルのせいかイタリアのせいか、一人ぼっちのラスト、一点への結実ではなくて、続いていく生への賛歌、生への愛だなあ、と感じました。
そういえばラスト付近で「道は自分で探すの」と言ったマンマ、ソフィア・ローレンですが、75歳だそうな。驚く!

これ、ブロードウェイのはバンデラス主演で、プロデューサー役とかも全部女性だったそう。ああ、見てみたいなあ!