「THEE」感想 アベさんの訃報を聞いた時、私はまだ死というものを分かっていなかったのだと思った。決して返らぬもの、決して戻らぬ存在。ミッシェルが解散した時、私はもうこれ以上新曲が聴けなくなるのは悲しいと思ったけど、それでもいいと思った。再結成を強く望むような気持ちは別になかった。それなのに、アベさんがいなくなったことで、もう永久に戻らぬものがあるのだということを、急に知らされたのだった。 ミッシェルの最後のツアーは雑誌のライブレポでその様子を知った。あれから八年くらいが経とうとしていて、初めて目にするライブの様子は今でも全く古くはなくて、やっぱりミッシェルはミッシェルで、唯一の存在で、ロックンロールだった。 彼らのデビュー時や、夏のロックフェス、様々に事件の起きたライブの映像も挟みつつ、ミッシェルを俯瞰する……というような評論は私には出来ず、私に出来るのはただ聴いて感じるだけで、それだけで良くって、本当にミッシェルってそこにあるってこと、今でも感じられるのに、不意な瞬間訪れる喪失感。 エンドロールで流れた「ガールフレンド」は、あのツアー中、一度しかやらなかった曲だったっけ。世界はくだらないから、ぶっ飛んでいたいのさ。今でもそう思ってる。そしてミッシェルの曲を聴いていれば、いつでもぶっ飛んでいられた、のさ。 単館上映、ほんとうに小さな映画館だったけど、たくさんの人が来ていた。みんな、どんな風に聴いていたんだろう。私はあの頃、大学生だった。列車とバスを乗り継いで大学に通った。ウォークマンはカセットが現役だった。 帰り道は、あの頃とまるで違う景色で、私はもう少し魔法にかかっていたかったと思った。 |