「めぐみ」感想



海外の人の撮った拉致事件のドキュメンタリー、ということで期待をして行きました。
その期待は、感動を、とかじゃなくて、公平な視線を、と言うのか。
これまでテレビから摂取してきた拉致事件の情報というのは、感情が先行して、
拉致事件がどういうものか、という正しい把握を自分の中でされていなかっただ。
そして、この映画の中で時系列に副い、拉致事件の30年を見たときに、
劇場内の多くの人と同じように、涙を堪えることが出来なかった。
それはやはり感動とかじゃなくて、悲しみ、否もっと胸を押す、苦しさ。

家族を愛することは当たり前でしょうか?

すっかり白髪頭になってしまった横田夫妻を見ていて、
今まで言葉としては知っていたものを、不意に心から悟った。
生まれてきた子供の最大の使命は、親を看取ることだと。
それを果たし終えるまでは、勝手に死んでなどならない。
私は今、共に暮らす母を思い、別れてしまった父を思い出した。
少なくとも母に対しては、これは絶対の義務だと悟り、泣きたくなった。

映画全体に和楽の音響演出が効いていて、特に前半の拉致直後、
まだ事件の全体像が当事者たちにも分かっていなかったころの
不安定な心理状況など、我がことのように伝わる。
被害者家族が命をかけて子供を愛し、製作者が私財をなげうって作った、
そう、これは、伝えられるべき、私たちの知るべき真実です。