「ベンジャミン・バトン」感想



人生において避け得ない老いと死を、賛歌する立場から描いた作品。
久しぶりに、素直にいい映画を観ました。

実は『おくりびと』の上映時間に間に合わず、「それじゃあ…」とかわりに
見た作品だったのですが、まさかこんなに泣かされるとは思いませんでした。
これでばっちり化粧していたら、パンダどころではなかった…。
涙があたたかいことを知った。

主人公の周囲に配置された人物は、イコール、大体が主人公より先に死んでしまう
人々なのですが、この人たちがいい。
主人公が育った老人ホームのお年寄り達。
主人公が乗り込んだ船の乗組員達。
主人公の父親、母親。
あと、雷に七回打たれた人は最高です。

結構、葬式のシーンがある映画でもあります。
その度に涙ぐんでしまっているのは、私がもう涙もろくなったのだろうか。
でも、主人公を育ててくれた母の葬式。
祭壇ではゴスペルが歌われ、すすり泣く声と大勢の歌声が一斉に聞こえる。
あの賑やかで、悲しいシーンは、
自分もこんな風に送られたいと思ってしまった。
自分の葬式の時は平沢進をかけてほしい、と言う人の気持ちが分かる。

人が生き、人が働き、人が努力し、そして日々人が生きているのは
やっぱり人生を賛歌するためなのだと思う。
賛歌し、謳歌する権利があるからこそ、
人は生きるために努力するのだなあ、と。

最後の瞬間、報われるなんてファンタジーだろうか。
確かに、多くの人々の生の最後の瞬間は、どうしようもないのかもしれない。
でも描かれるからには、この報われる一瞬は、きっとどこかに存在する
希望なんだ。
だから、涙が止まらないんだ。