「悪夢探偵2」感想



最近、映画を観ていない。集中力が低い。景色に潜り込めない。
その原点的問題としての感受性の枯渇(枯渇って言うな!)のリハビリとして
塚本晋也作品は劇薬だけど、ドンピシャだろうと。
そういう理由がなくても、塚本作品が劇場で観られるなら観たかったし、
悪夢探偵の続きなら気になる。

前作みたいなジャキジャキ感を期待して行ったなら、そこは期待外れになるけれど、
しかし映画全てが期待外れだった、ということにはならない。
やっぱり怖い。何だか怖い。
映画の中で、女達の口から繰り返されるように「怖い」。
前作では本当に刃物の刺さるような痛みや恐怖があったけれども、
今回のは、逃げられない感じに包まれる恐怖で。
この映画を観た後で、部屋や風呂場で一人になってしまうと、
無意味に呻きたくなるような、そんな不安定な心持ちになってしまう。

人間が一番怖い、というのは日本のホラーではベタなオチでしょうが、
でも、この映画のメッセージは、多分、そうじゃない。
監督が自らの子を持ち、自らを育てた母へ思いを巡らせ出来上がった映画だと
事前情報で知ってはいたけれども、だからと言って
これは母性を賛美するだけのメッセージではない。

恐怖と、苦しみだろうか。
生きている間中、免れないこれら苦痛。
『悪霊』のキリーロフが、生は苦痛であり恐怖であると言った
まさにそのもののような。

主人公の母親にとって、また今回のキーパーソンである少女の菊川にとって
まさしく生はそうであったし、主人公の京一にとってもほとんどそうだ。

でも生きてしまっているから、悪夢から覚めた時、
彼女は、彼は、泣くのだ。
涙が恐怖を溶かす。

泣いていいんだよ、みたいな優しい終わりではないし、
そういうメッセージ性を露骨に表すのは塚本作品ではないと思うんだけど、
でも悲しい時泣いて、辛い時泣いて、苦しい時泣いて、
悪夢から覚めて泣いて、
泣くという行為は、この生きている世界で許された、傷を癒す行為なんだろう。