「メッセージ」感想 GotG2を観たことによって今年前半の映画地図が塗り変わってしまったのですが、それでも静かにインパクトがありました。淡々と名作であると思います。 邦題と原題と原作のタイトルがそれぞれ違うのですが、今回の邦題はまあまあ普通なんではないかと。原作の「あなたの人生の物語」が一番しっくりいく気もしますが。映画の性質と広告の仕方を考えた時には「メッセージ」になっちゃうかなあ、と。「あなたの人生の物語」だとヒューマンドラマ映画っぽいイメージになっちゃいますかね、日本では。 原作だと一人称で進む、故に語り部にとってあやふやになってしまう現実と幻覚、今ではない時間の境の微妙さ、浮遊感が映像に上手く表れていて、個人的にはとても綺麗な映画だと思いました。 宣伝でもポスターでもTHE・SF映画というような地球外の物体が映っています。そして地球外生命体の文字。人が言語を習得した時、その人の世界が変わるという話が映画の前半に出てくるのですが、このことは私もたびたび気づいては嬉しくなる事実です。違う言語による思考を可能にした時、ものの考え方が変わる。見方、捉え方も変わる。映画の最初は某お菓子に似た謎の物体や地球外生命体の存在のインパクトが圧してくるのですが、映画が進むにつれ、そして終わった時に自分の頭を占めているのは言語であり、時間の謎。 以下、少しネタバレを。 ヘプタポッドが人類の進化を促した結果、全人類も追って主人公と同じように時間の概念が変わり、過去と未来も同時に存在するかのように扱えるようになるのかな。主人公の未来を見る力も、彼女が(選ばれた血筋的な)特別な存在だからではなく、彼女がヘプタポッドの言語の解読者であるが故に未来が過去に干渉しているのかと思うのですが、ここの順番は割とどっちでもいいかもしれない。それよりも、彼女は未来を知っていてもそれを変えないということですね。プッチ神父の目指した世界を思い出したなあ、どうしても。何が起こるかを知っていて尚覚悟して生きることのできる世界がプッチの目指したものでしたね。その世界はジョジョの物語世界では否定されたけど、案外あり得る世界であるのかも。 主人公の娘の記憶が収まるべきところに収まり全ての情報を、私達の知る過去・現在・未来の時系列から見ることができた時、謎解きのような心地よさもあり、しかもそれが言葉による説明ではなく描写によってされるのが美しくて…。結構…いやかなりいい映画だったなあ、と。 |