「レゴ・バットマン・ザ・ムービー」感想



ロゴ、ドーン!(ド低音)
この瞬間いけませんでしたし、この瞬間でもうオールオッケーでしたね。ロゴ、ドーン。今日一番笑った瞬間ですよ。映画始まったばかりなのに既に笑いの沸点超えるとかおかしいにもほどがある。ロゴ、ドーン。最後はマッチョなロゴで〆ですよ。
ギャグテイストだけどしっかりバットマン。あの重苦しい主題を引き摺りながら、生身の人間であり心も身体も傷つきやすいが故に鍛え上げたDC鋼の男の双璧、バットマンことブルース・ウェインさんの人生に踏み込み、ヒーローのあり方に踏み込み、他の映画にも踏み込みまくりと言うか他の映画から悪役が踏み込みまくり、バットマンをぶん殴った上で抱きしめるような、ほんと素敵な映画でした。
面白い映画、笑える映画、この映画を褒めつつ言い表す言葉は色々あるけど、孤独を貫いてきたバットマンが今まで出来ないことをやってくれたのは本当に素晴らしくって…。バットマンvsスーパーマンのウェインさんのみならず過去様々な作品に登場していたバットマンを連れてきて、これ! これ見てみ! あなたの胸の中に手を突っ込んでみ!? と言いたくなるけど、このレゴバットマンは人形だからこそ、誰が演じたバットマンだろうが誰が描いたバットマンだろうが全てのバットマンの概念の集合体なのかもしれませんねえ…。
レゴだからこそリアリティに縛られずに、バットマンの生い立ちや抱えている課題、しかも実写だと本人がなかなか認めようとしない淋しさ、受け入れない忠告なんかもガンガン叩き込んで、それこそレゴみたいに劇的スピード感で再構築できたんだろうなあ。物語展開の早さ、しかし手を抜かない日常描写や沈黙との緩急凄かったね。前半の、帰宅したバットマンがレンジで夕食を温めるシーン、描写としても「小説であそこまで辿り着きたいなあ!」と深く頭の奥まで入り込んだ。レンジの光に照らされて回転する影、耐熱皿の揺れる音、2分と間違えて20分でセットしそうになる仕事後の疲労感と台所ひんやりした空気。もう…最高か…!!
孤高のオレは格好良く、孤独すなわちナンバーワンでオンリーワンなバットマンの姿は無闇に大きく組み立てすぎたレゴみたいに崩壊する。そもそもが危ういバランスだったのだ。帰宅を迎えてくれるのはSiri、アルフレッドに対しては反抗期(戯画的反抗期でもあるけど、実際のウェインさんがまっとうな反抗期を経てそれを受け入れられているはずもなかろうて…)、最強の敵はスーパーマンだと頑なに繰り返すのは萌えましたが(アイアンマンにも子供じみたライバル心がありますね)そのスーパーマンは孤独ではなく自分に内緒でパーティ…いや内緒だったのか、最初から勘定に入ってなかったんじゃないのか、ザフラさんなんか普通に存在忘れてないか!? ヒーロー故に、最大の敵故に、相手も自分と同じなのだと頭から信じ込んでいたけど、そんなことはなかった。あのシーンはいたたまれなかった…。いたたまれないけど同時に、バットマンは自分と境遇が同じだと思い込むくらいスーパーマンに対して絶大な信頼を実は持っていたんだな、と…。だってあのバットマンがいくら自己中だからって、相手のことを「あいつはこうだ!」と疑いもしなかったんですよ。扉を開ければすぐにも砕け散る事実は常にそばにあったのに「スーパーマンは孤独なヤツ」って信じ続けてたんですよ、事実を目の当たりにするまで。孤独なのはあなたですからね、ウェインさん……。
それどころかジョーカーに対しても真っ正面から向き合ってこなかったって…。バットマンのことなのにこっちまで心抉られた人は少なからずいるんじゃないか? 私は抉られたぞ。自分が傷つかないために叩き潰す。当然の役回りだから、相手が悪役だからって甘えもあったんだよなあ。お蔭で自分の心や、自分と他者の関係に真剣に取り組まないでここまで来られた。えー、ちなみに子安ジョーカーだからこそ成立した今回の対立と結末でもあると今更思えます。青野ジョーカーだと無理じゃないかなというか、青野ジョーカーの悪役の質と純度、突き抜けてるじゃん…。恐いじゃん…。
ハーレクインは今作も可愛かった。結構、結構!
スーサイドスクワッドも面白かったですが、今回の、世界の悪役大集合!は凄いワクワク感でしたね。スースクのこいつらやらかしそう〜、という期待感は物語の展開とか人物同士の関係性とか割と言語化しやすい期待感で、めちゃ語れるタイプ。世界の悪役大集合!はレゴででっかいキャラ作ったでー! 懐かしのあのキャラも作ったでー! より子供のような気持ちのワクワク感が強く、次どんな悪役出てくんの? 何すんの? 溶岩流すん? 来ましたー! キングコングがでかいビルに登った−! と観客子供化。実は面倒見のいいサウロンに、難しくないお馴染みの呪文を唱えてくれるヴォルデモート卿。個人的に一番盛り上がったのはグレムリンでしょうか。あいつなー! 子供の頃、あやつと「IT」のピエロが恐怖の権化でなー!!
敵の魅力を語り始めると止まらなくなるな。味方サイド! アルフレッドはいつもどおり優秀オブ優秀、そして老いを感じさせぬ活躍、あいっかわらず素敵だった! ロビン! 小島よしおのギャグをよく口にするので、ちょっと前の世代のお笑いが好きなんだろうか、原語の脚本がそういうちょっと古めのギャグを仕込んでるんだろうかと思っていたら、声、本人だったよ…。違和感なかったよ…。SING以上の驚きだったよ…。Siriさんも声優デビュー(いや、これが初かは知らない)したので、吹き替えお気に入りと言っていいほど面白かったのですが、字幕でも見てみたい…っ!