「相棒−劇場版4−」感想 昔キネ旬で見た「年に一度はグリーナウェイを体感しなきゃダメ!」という言い回しが好きで、それに倣った発言を何度もしているのですが、相棒劇場版もまた私にとっては何年かに一度はこういうのに直面しなきゃダメね!という映画でございます。 (ちなみにピーター・グリーナウェイの映画は「81/2の女たち」までは日本でも結構公開されているんだけれども、それ以降は2007年に「レンブラントの夜警」が公開されただけなのね。私が観たのは「ピーター・グリーナウェイの枕草子」でした。) 相棒が突きつけてくる社会問題や右京さん始め色々な人物の正義感や理念、ちょっと極端であったり偏ってはいるものの、2時間ズドーンと考えさせてくれる。その上、ミステリ、エンタメ作品としてよく出来上がっているから、やっぱり相棒はすげえなあと思う訳です。ミステリ作品としては劇場版4作中一番好きかもしれない。後味云々は置いておいても、謎解きの過程がすごくワクワクした。 相棒は出された伏線は全部回収するというか、全ての要素に余さず意味を与えて完成させる作品ですが、今回は役者の演技から何から何までが伏線として回収されて、映画のシーンを反芻しながらあれとあそこが繋がって、ああ、面白い、と帰り道まで映画が続くのです。誰かと一緒に行って喋りながら帰りたかった…無理だけど…無理なの分かってるけど……仕事帰りに最終上映に駆け込んだ体たらくだよ! 気になった人物の話からしましょうか…。犯人グループのリーダー格を演じる北村一輝。この人に殺人鬼だの非情なテロリストだのさせたらシャレにならないじゃないですか…と思っていたら、ある瞬間で人をいたわって見せたあの表情よ。やばいわ…。 冠城君。執事みたいなポジションに立つ冠城君はいいな…。これはよい冠城君。神戸君。登場した瞬間から安心感すげえ! 捜一の二人は劇場版でだいたい泥くさい展開の担い手でボロボロになった末に重大事の影響下にいて「ええー!?」ってなってますけど、そんな脇役が好きです。いいよ。スマートじゃなくていい。米沢さんは…もう観念するしかないんじゃないですかね……。他にも大河内さんとか、よっ暇か?のおっちゃんとか、オールスターなのが劇場版のいいところだ。 国の偉い人、警察の偉い人のこと。江守徹演じる偉い人の悪い人オーラ、圧巻。だいぶお年を召されましたな…。篠井英介演じる偉い人の内側の繊細さは、この人政界で生き残れるのかしらとドキドキするけど、こういう人だからこそ人望もあるんでしょうなあ。相棒によくある描写、権力者の汚さを戯画的に強調して描いているとも…言えないのかもねえ。上なんてこんなもんなのかもねえ。 話の規模も、エンタメとシリアスの度合いも、個人的にはバランスよく思えて、いい相棒映画だったなあと満足です。謎解きの結果が何度も引っ繰り返されて後味が苦いのも含めてね。先日、東南アジアの残留日本人の話題をちらっと見かけたけど、私達はもっと知らないことを知って、検証していかなきゃいけないんじゃないですかねえ。近現代史って密度がとても濃いのにあまり勉強できていないの(いや歴史全般不勉強が多すぎてそうなんだけど)恥ずかしいなあ。知らないこと(歴史、事件、思想などなど)を考えるきっかけをくれもする相棒劇場版って、創作物として目指す一つの形でもあるよね。 |