「ヴィジット」感想



怖い。
気になる点を解消したいんだけど、もう一度観る勇気が起きない。
少なくとも鑑賞直後の今、息の止まるような100分を再び体験するのは無理だ。
心臓どころが肉体の全機能が「無理です」と言っている。
しかしシャマラン映画を観たという満足感は100%超えである。
おもしろーい! でもこれ以上無理ー!!

怖いという前評判は聞いていたのですが、覚悟していても怖い。
これから怖がらせるぞという演出を裏切らない怖さで素直に怖がりどおしでした。
今回の映画は宇宙人も心霊も超常現象も何一つありません。
肉体をもった人間のみが登場します。
思春期の姉弟が初めて会いに行った祖父母は認知症だった…。
じいちゃんばあちゃんが認知症であることは作中でも説明され、それは嘘ではないのであり、だから目の前で展開されているのは現実的な認知症の問題行動(徘徊や奇行etc.)なんだけど、分かってるんだけど、怖いよ、もうやめてよ。
エンドロールでも息止めてたからね……。

二段落使って怖いしか言っていません。

これだけ怖いし、もっとも怖い瞬間を含めた最終決戦がある訳だけど、しかしこの映画作中作なんだよね。
主人公である姉弟がそれぞれ撮影したものを姉が一本の映画に編集したもの。
っていうことは最終決戦でじいちゃんばあちゃんは死んでないんだろうな……。
気の許せない敵キャラが登場すると「早く殺さなきゃ」と思ってしまうタイプなので、そこはしっかり殺しておきたい気もするんだけど、これから立ち直っていく姉弟、また二人の子供の母親のことを考えれば「立ち向かった、戦った、相手は非合法の手段で自分たちを傷つけようとしたが、自分らは自己防衛の範囲内で勝利した」方がよいわな……、それに、そうじゃないとエンディングで弟のラップとかのんきに付けてらんないですよ。

私はシャマランの絵的にも物語的にも「見せない構図」と、ラスト一文が好きです。
小説におけるラスト一文のような、映画の最後の最後のワンシーン。
最も好きなのは「サイン」なのですが、「ヴィジット」は内容的にもラストシーン的にも上位に食い込む、かも。
物語としては、傷を負った親子が過去を乗り越えて成長し絆を強くする物語なんだよね。
良い話……なんですよ……(と薦めるのは詐欺のような気がするのである)。