「ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜」感想



舞台だったら更に1.5倍面白かったろうなあ。

8ヶ月ぶりの映画館。
昨年ある時期からぱったり映画館に行かなくなって、そういえば秋からよく風邪を引いたし冬はコミケの原稿で忙しかったけど何がそんなにと思ったら、最後の映画の日付を見ていろいろ納得いってしまった。
が、それは別の話である。
そんで復帰一本目に選んだのは、実は『マジック・イン・ムーンライト』だったのが寝坊をしたので、この映画になりました。
いやいや、それでも今日2本目の映画にするつもりだったんだよ。
今日は3本観る予定だった。

どうしてこの映画を観ようと決めたのかというと、もう単純に松尾スズキが見たかったんだろうな…。
松尾スズキの声聞いて、松尾スズキの演技が見たかったんだ。
そんなに大好きな俳優さんなのかと問われると、いや私の一番は安藤政信さんなのだが、野田秀樹の『パンドラの鐘』を観た時からこの人の存在がくせになっちゃって。
しかし松尾スズキ監督作と気づいたのも後になってからで、映画のポスターを最初に見た時は「韓国映画かしら…」と思っていた。
いや、ジヌっていう響きがね。
真ん中に松田龍平くんいるじゃん、隣に阿部サダヲと西田敏行もいるじゃん、気付よ…。

お金恐怖症の男が一円も使わず生きていくというストーリーと聞いて、そこに松尾スズキなら強烈なギャグとバイオレンスを入れてくるんだろうと思っていた、その期待は裏切られなかった。
映画を見終えて、笑いすぎてスクリーンが見られなくなるくらい笑う部分はあったし、バイオレンスはえげつないくらいだったし、エロへの欲動や主人公の情けなさとか面白いと同時に勉強にもなったし(ちゃんと欠点があって、格好いいところは格好いい)、一筋縄な感情を持たせないハッピーエンドはとても良かったのだけれど、なーんか、これ、舞台で見たかったなあ、という思いが込み上げた。
もっと面白い姿があるはずなんだ、それはきっと舞台なんだ、っていう。
無論、映画だからこその演出があってこそこの作品が成立しているのだから、この言い方は失礼かと思うんだけど、好みとしてね。
舞台だと1.5倍面白かったのでは、と書いたけど、その場合、多分全体のスピードももうちょっと上がりそうだな。

松尾スズキの出てるシーンは、そりゃもう満足しました。
小道具がいちいち良いよなあ、新巻鮭とかこけしとか三谷幸喜とか…。
あとね、旅館の女将さんがよかった。
ほんとよかった。
すごくよかった。
実際にはシングルマザーなんだけど、こう未亡人感が、すごく…。