「ポセイドン」感想



私が録画していた爆笑問題の番組を見ていると、ソファの隣に座った弟が
無情にもリモコンの停止ボタンを押し、自分のレンタルしてきたDVDを入れたのでした。
急遽始まったポセイドン鑑賞。
台所から母が「タイタニック?」と声をかけました。まあね。

映画館で見ないということは、集中はそこまで持続しないし、
明るい電気の下で、しかも親しい人間と一緒に観始めて、尚且つハリウッド製の
エンターテイメントでは、大ツッコミ祭となる訳です。
なりました。

主人公っぽい男の人(ディランさん)が出て来たり、元市長のパパと娘とBFとかいたり、
ディランさんと追々くっつくのかな、という子持ちの独身女性がいたり。
しかし姉弟の興味をひいたのは、あるじいさんだった。
じいさん、何か深刻そうに留守電にメッセージを残す。
じいさん、ディナーの席で、恋人にフられたっぽい話をする。
『彼は船に乗らなかった…』(←科白曖昧)
「……彼?」
「彼って言ったね」
「彼!?」
ここでじいさんがホモであることが発覚し、驚いてるのは弟ではなく私です。
じいさん、その後、入水自殺をはかるが、その時、水平線からやってきたものがあった…。

やってきた津波。
慌てて進路変更する操舵室。しかし時既に遅し。
史上最大の豪華客船(?)は津波とほぼ平行になった状態で波に呑まれ…
…横倒しに。
「ねえ、(素人考えだけど)横になって余計に状況悪くなってない?」
「かもね」
力学的考察は「かもね」で終了し、その後船の様々な場所で、様々な人間が、
様々に死んでゆく様が次々と、次々と映し出され、観客の興味は完全にそっちへ。
「俺、外にいた方が助かるんじゃないかって思うんだ」
弟は、そう言いますが、まあ微妙なラインじゃねえかなあ。
外にいたら、生身のままあの津波を食らうからなあ。

しかし、転覆した船から助かるには、やはり外に出るしかない。
で、ディランさんとか、例の母子とか、パパと娘とBFとか、密航者とかコックさんとか
何故か入水自殺もせずに生き残ってるじいさんとかで、脱出を試みる訳です。

やあ、じいさんとコックさんと密航者の関係はつらかった。
ただ、話が話なら絶対に萌えたなあ、この関係。

脱出に手を貸すコックさん。
しかし、エレベーター孔で絶体絶命のピンチに陥り、じいさんに蹴り落とされることに…。
ほんの1分前までじいさんは、先に逃げろと言ったコックさんに名を尋ね、
良い名だと言い、皆で助かろうとしていたのに……自分が助かりたいなら、
蹴り落とさざるを得ない状況。
「人間ってやだやだ」
弟が言い、私は気持ちが分かる気がして、黙っていた。
自分もそうするだろう、と思うと、暗くなるんだよね。

違うホールで被害にあっていた娘&BF&密航者を助け出した後、
何かとじいさんは密航者を気遣う。
これがねー、その気遣い方とかが、色々、死んだコックさんへの所作と
かぶるんですよ。痛いなあ。おいしいなあ。でも痛い方がまさるなあ。

子役の子、可愛かった。
でも、危機的状況であっちこっち行きすぎだろ、ええっと名前はコナー?
また、これで助かるぞ!っていう時に限っていなくなり、
見つかった時には、金網の向こうで海水に呑まれそうになりながらアップアップしてるし。
その時、観ていた家族の誰も同情せず、
「まーたちょこまかと、子供はこれだっけんが!」
「なんばしよっとか!」
「なんで、おっかさんも見とらんとか!」
と、画面に向かって言っていたのが印象的でした。
久しぶりに感じた家族の一体感…。

と、海水に巻き込まれたり、巻き込まれたり、もう息が続かないよ!っていう状態に
なったり、海洋モノのお約束なスリルと、多数の犠牲者の果てに
たった六人だけが生き残る…と。

これ、ハッピーエンドじゃないよな。
ハッピーエンドじゃないよな!?
認めないぞ、これがハッピーエンドだなんて!
しかも、じいさん生き残ってる!
密航者の女の子も死んじゃったのに!
解せん!!

じゃあ全員助からなければよかったのか、と問われると、
それじゃ映画にならないんですけどね。