「敬愛なるベートーヴェン」感想 公開終了直前、飛び込んだレイトショーの興行、と思いきや 好評につき三日間公開延長とのこと。 久しぶりの映画だったので、個人的感想を。 冒頭、大フーガの流れるオープニング。 走る馬車、大写しになる人の顔、顔、青い大地。 なんだか戦争映画みたいな印象で、ちょっと胸がざわざわする。 大フーガという曲もそうなのかなあ、実は初めて聞いた不勉強者です。 が、登場したベトベン先生の姿にそういう謙虚な心は消え去り、 心にはただ一言が、ツッコミのごとく響き渡る。 ベートーベン、胸毛キャラかよ!!!! まあ楽壇の熊だしなあ、非常にしっくりいく胸毛っぷりではある。 でもそこまで嬉しくないな、胸毛。 他にも大声出しながら水浴び、尻出し、オナラ節。 郷里に帰れば腐るほどいるよ、こういうオッサン・ジイサン達、 と思うと、うんざりすると共に、自分でも思ってみないほどショックだった。 意外と、マエストロには夢を見ていたかったようです、自分。 しかし胸毛で驚くだけでは足りなかった。 原題の「コピーイング・ベートーベン」にあるように、主人公は写譜師。 その写譜師の女主人公の名が、アンナ・ホルツ、だった日には あれ、執事のホルツ君はどこかな、と目が泳ぐというものです。 それどころか、映画終了まで執事と言えばシントラーさえ出なかったのですが。 特に問題もなくベトベンの信頼を得るアンナ・ホルツ。 第九も完成。日曜日には初演。溺愛する甥が来なくってショゲてるベトベンも アンナが指揮の手伝いをしてくれるなら、と言う訳で無事公演。 この第九演奏中の、色っぽさを狙っているんであろう演出は 「人造人間キカイダー THE ANIMATION」の最終回一話前に似た感じの演出で。 っていうか、二人の間にそういうのを仄めかしたいのなら、 それだけでいいじゃないか。 別に身体を洗わせなくたっていいじゃないか! 先生は女に弱いっちゃ、何となく聞いていたのですが、 でも、跪いたよ!? 跪いてしまったよ!? 先生ええのかそれで!! 貴方は冒頭で癌の老人をこれでもかと打ち据えた人間じゃないのか!! 彼は音楽家だ、芸術家だ。 素晴らしい作品を作ることが命の仕事だ、人格者でなくてもいい! しかし、なんか、釈然としないというか、逆に腹が立ってくるというか。 ところどころ、否、ほとんどの部分で、アントン・シントラーがその場にいたら 憎しみだけで、この女主人公を殺せそうだなあ、と他人事のように思った。 いや、シントラーなら憎しみだけで目からビーム出せると思う。 でも、冒頭近くで、老いた写譜師がベトベンに酷く殴打されるシーンは シントラーその身だったら悦びそう、と思ったのは、 あまりに思考が偏っているでしょうか。 まあ映画始まってから終わるまで、主人公が青年だったらよかったのになあ、 と思っていました。 そしたら同人界もちょっと盛り上がったろうに。 物語としては、あまり面白くなかったかなあ。 映像は、戦争モノと歴史モノと当たらしめの演出とドキュメンタリーの映し方が 混じってる感じで、執着するほどよかったわけじゃないけど、 久しぶりに見た映画としては、まあ悪くなかった程度、でしょうか。 去年最後に観た映画がデスノだったので、あの映画のチープ感と比べれば、 まあ、映画を観たかなあ、という気持ちにはなれる。 けれども、満足感はなかったなあ。 (本筋と関係ない感想) アンナ・ホルツの恋人がデザインした新しい橋。 近代的かもしれないけれど、ちょっと鉄骨の量が多いんじゃないかなあ。 いや、素人考えだけど、ちょっと気になったよ。 あと、あの場で壊すのは流石に酷いと思います、マエストロ。 だって本気で同情してしまったもの…。 |