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「アトミック・ブロンド」感想



意志の力で肉体を用いる。意志の力で立ち上がる。

意志の力で動く生き物を見ると羨ましい。憧れてしまう。

「アトミック・ブロンド」に登場するスパイたちは敵も味方も血まみれになろうがフラフラになろうが立ち上がる。肉体が機能を停止するまで意志が消えない。痛みがあり肉体にダメージが蓄積するアクションは、アクションとしての面白さだけでなく、敵味方問わず登場人物たちに人生の宿った肉体を与え、それがこの映画の評価を私の中で格段に上げた。ストーリーの謎に頭が追いつかない部分があっても、まずスクリーンの中の肉体が表現するものの説得力に説得させられたからだ。

シャーリーズ・セロン…。昔、車のCMで「ホンダフル・ライフ!」って笑顔を振りまいていた人だよなあ…。「マッドマックス怒りのデス・ロード」を観た時も同じ人なのかと驚いたけれども。彼女が氷水に浸かるシーン、ウォッカを飲み干すシーンは何度見てもよいものです。劇中、彼女は何度も氷水の中に身を沈め、あるいは氷の中に手を突っ込むんだけど、それは周囲に敵のいないシーンであったとしても彼女が自分をスパイという、状況の下でコントロールすべき一つの道具として自分を扱い律している象徴なのかなとも思ったり。

恋愛要素の有無は作品の空気との相性。例えば、安易にキスシーンに流れなかった「パシフィック・リム」の演出の意志力とか好もしい。さて今回はマカヴォイ演じるスパイとの関係だけどそういうものが一切生まれなかった。いいぞ、いいぞ。っていうかマカヴォイがホルマジオさんに見える。来ている服の模様のせいか、スプリットのハゲよりは髪が伸びた坊主頭のせいか、チャーミングなような意地悪なような腹の底の窺えない笑顔のせいか、マカヴォイがホルマジオに見える。声を大にして言いたい。私は今作のマカヴォイがホルマジオの実写に見えるよ結構な勢いでー!

百合のシーンはプレゼントみたいなものだった。この寒々しい光景が続く映画の中で。

さて他にも「ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ(裏切りのサーカス)」でパーシー・アレリンだった人がMI6にいて、あれ、この人この世界線でもスパイやってる、と思ったり(更には「ハイドリヒを撃て!」で協力者を演じていた人だわ…)。あと観客としてもあまりに周囲の人間を疑いすぎて、登場するたびに「あなたは信用してもいいのよね!?」と心の中で問いかけていたドイツの協力者、若くて顔のいい青年なのですが、こないだリメイク版「IT」でこっちをさんざん驚かしてくれたピエロ役の人だと後で知りました。ほんとメイクの下はイケメン…(が故に邪悪さが強くて恐怖感の方が減ったのかもしれない)。