「エル ELLE」感想



アッシュ・ガールは実は…実は……?

ああ、実は、実は……?

もしかしてこういう事なんじゃないの? 予告で煽られた時はフーンって感じだったけど、本当の本当に危険なのは彼女なんじゃないの?

多くの疑問符と恐ろしげな推測が頭に浮かぶのですが胸を行き過ぎる全てが終わりを迎えた後の、女性たちがどんな方法であれ手に掴んだそれなりの幸せ、あるいは幸せになるための鍵を手に掴んだというぽっかりとした明るさ。その陽が落ちるのが墓地というのが懐かしく、心地いい。

主人公を襲った犯人が誰なのか判明した後も物語が続き、更に関係が変化するのが面白い。変化もするけど囚われる、囚われるからこそ打破する最後の展開が待っている。それによって、実は、実は、もしかして……、と明かされない真実が仄めかされる。地味に良作ではないかと。

観ている最中は「ああー! 「氷の微笑」監督の映画だー!」という感じと全編聞こえるフランス語の科白で満腹感が強いのですが、ラストシーンのぽっかりした明るさのお蔭で消化が良くなり、程よく腹八分。犯人とか、容疑がかかる男たちに関しては病の部類である問題を感じるのですが、それをどうこうする映画ではないので、ここはラストシーンで彼女らが全き幸せではないがまあそこそこ…という笑顔を手に入れたことで充分だと思いました。