「エイリアン:コヴェナント」感想 2時間しっかり過不足なくエイリアン。 エイリアンが出てきてねとねとした体液を撒き散らしながら人間を襲い血がブシュー!と飛び散る映画の最新版を観たければこれで問題ないでしょうってくらい頭から尻尾までとにかくしっかりエイリアン。「プロメテウス」から続く物語ということですが、ある程度何があったか察することのできる観客なら前作未見でも問題ないと思われます。 もう…今更何か言う必要はないんじゃないかな…。謎の電波を傍受する宇宙船、不慮の事故、謎の惑星でじわじわ迫りくるエイリアンの恐怖、敵なのか味方なのか分からないアンドロイド、タンクトップ姿で戦う女主人公、勿論エッチな気分が盛り上がったカップルの元へは容赦なくエイリアンの牙が襲いかかる。付け加えることがない…。この過不足なさがシリーズ通して観て来た人には新鮮味のなさに映るかもしれないけど、私は1作目も「プロメテウス」も未見だったので、「これがリドリー・スコットのエイリアンかあ…」と十分な満腹感です。 今回は観た人がとにかく「マイケル・ファスベンダーが!」と言っていて、私も御多分に漏れずファスベンダーの良さを堪能した訳ですが、ウォルターの方が好みです。エイリアンは2、3、4のみ観て来たので、私の中ではアンドロイドのほぼ最高峰にビショップがいるのです。勿論次点がコール。他作品に登場するアンドロイドでさえビショップとの比較を免れないくらい自分の指向性に影響を与えたビショップなので、雰囲気の似たウォルターの方が好きなのです。「プロメテウス」を観たらデイヴィッドに対する執着の度合も変わるかもしれませんが。 宇宙船乗組員のドタバタは……。「インターステラ―」の時も「宇宙飛行士がこんなんでいいのか?」と思ったし、「パッセンジャー」の時も「宇宙船を飛ばすのにこんな管理体制でいいのか?」と思ったけど、誰でも宇宙に行けちゃう時代になると民間から宇宙船に乗る人間なんてこんなものかもしれませんねえ。今の地上ではどんな人間でも運転免許を取得して自動車に乗っているものね。「オデッセイ(火星の人)」が特別だったんだ。あれは宇宙飛行の経験を引き継いで宇宙飛行士となるべく訓練された人々の登場する物語だったから。「インターステラ―」は経験の引き継ぎと訓練が十分ではなかった感があるし、「パッセンジャー」と「エイリアン」は民間だものね。誰もが鋼のメンタルとあの判断力・決断力は持たないよね…。でも「パッセンジャー」のホームステッド社は酷い。その点、今作においてアンドロイドが常に船内を動き回って管理するシステムはだいぶマシでしたね。 いや人間が管理すればいいってもんじゃないと思うけど。ヒューマンエラーは起きるし、「パッセンジャー」でオーロラが再冬眠に入るかどうか決断するシーンでも思ったけど、人間を信じることの方が大変だ。コヴェナントも人間のクルーが起きていた時の方が問題起きそうだな…。うん、パニックに陥った人間がどんどん判断を誤ったり、エゴイスティックに行動する様は、すごく人間だなあ、という感じがした。倒すべき敵という以上に恐怖の対象であるエイリアンだったので、実にエイリアンの映画を観たという充実感がありました。 |