「武曲 MUKOKU」感想



この映画で一番格好いいのは柄本明演ずる光邑先生ですから!!!!

以上!!!!

以下、おまけの感想。結構科白の少ない映画…なんですよね。主役の綾野剛の科白なんか9割酔っぱらってて聞き取れないし。でもどうして嵐の中の果し合いまで来てしまったか分かる。ああ、いいなあ。大事なことは喋らせたくない。でもそのためには描写しなければならない。効果的演出も含めてこの映画の描写するスタンスは、最近ヒーローがどっかんどっかんやるのをメインに観ていた頭にはハッとする新鮮さがあって、観て良かったと思いました。(監督が「海炭市叙景」の方でした。道理で。)

実は躊躇もあったんですね。藤沢周作品の映画化だから観なきゃとは思うものの、個人的に剣道にはいい思い出がなくて(中略)でも柄本明が格好良かったのでいろいろ不問に付す。

村上虹郎君は凄かったですね。少年の倦みも清潔さも勁烈な様も。どんどんどんどん魅力的になる。こっちの意識が彼の瞳や肉体に吸い込まれる。原作を読んでいる時は矢田部に執着があったのですが、藤沢周の書く十代がスクリーンに姿を現すとこんなになるのか…と羽田ばかり目で追っていました。

説明されないけれども登場したその場にさらっと存在できる脇役たちも素晴らしくて、個人的には羽田の母親の存在感がとても心地よかった。

しかし何といっても柄本明ですねえ。蓄積された経験が一瞬ふわっと花開くような所作の美しさに心底惚れる。木刀を取り出してみせるシーン。堂に入って軽く礼をするシーン。竹刀を削るシーンの煙草を持つ手。ああ、好きだ…。

葉隠がもしも、もしも映像化することがあれば、常朝先生をおまかせできるのでは……。