ひよこふっくまと宮ちゃんの朝







 歯ブラシを片手に洗面台の鏡を覗き込む。朝の陽を背後に受けてぼんやりと佇んでいるのは己だ。自分の顔だ、と熊本は思った。朝まで過ごすことはないでもなかったが、妙な感慨があった。自分の使うものとは違う、ミントの味のきつい歯磨き粉で歯を磨きながら口の端から垂れる白い泡にああこれだと思った。口にくわえる、など。
 鼻息を吹きかけたり戯れに唇を付けていたのがいつの間にやら舐めさせられ、仕舞いには口を開けていた。突っ込ませる気持ちは分かる。自分からくわえた昨夜の気持ちが分からない。そう考えていると歯ブラシの異物感にさええずいてしまう。不快な音を立てて泡を吐き出す。背後から五月蠅いと声が飛んだ。福岡は厨房に立っている。
 便所を流す水音とともにドアが開いて、熊、と自
分をぞんざいに呼ぶ声。
「まだ歯磨きしてるの。おてて洗いたいんだけど」
「うん…」
 宮崎が上半身裸のまま、背後に佇んで順番を待っている。熊本は気弱な態度で横にどいた。
「なんで裸や。風邪ば引くぞ」
「寝汗かいちゃったんだもの。べたべただよ。気持ち悪い」
 子供の、と思っていると存外広い手がばしゃばしゃと水を散らしながら顔を洗う。
 水の滴る顔がこちらを向いて、にやりと笑った。
「口、ついてるよ」
 手の甲で拭う。ミント味の白い泡。
「朝からえっちな顔してる」
 タオルで口元を隠し、宮崎がぐふふと笑う。なんやそら、と答えながら熊本は否定できない。
 突っ込まれたのではなかった。促す手に抗えず、自分から口を開いたのだった。咥えても、どうすればいいのか分からない。口の中のそれに吸いついたまま苦しげに鼻で息をしていると、福岡の手が優しく頭を撫でた。自分の粗い髪を何度も何度も手櫛が梳き、掌の熱を分け与えるように撫でられた。魔羅を咥えている、また咥えられていることも忘れたかのような穏やかな優しさだった。熊本はより深くまでそれを咥えたが、耐えきれず鼻から息とともに鼻水まで吹き出した。髪を引っ張られて口を離した。どこもかしこも唾液で濡れていた。今まで咥えていたものはもう支えを要しない。両手を添え唇を寄せ、咥えるよりもこうしたかったのだと思った。福岡の魔羅は頬を擦り、鼻先を叩いた。
 ぼんやりと口が開いている。鏡の中の自分は昨夜と同じ顔をしている。
 したい、ような。
 ――宮が起きとる。
 顔を洗った。真水で口を漱いだ。股間はぎゅっと握ると痛みに少し大人しくなった。
「よし」
 朝食の並ぶ座敷に向かう。宮崎は風邪を引くと福岡のTシャツを着せられていた。
「黄色い…」
「福岡君とお揃いー」
「夢のレンズ〜」
「熊の分もあるよ」
「え?」




しゃさんの県擬の二次。