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証を残してください
腰に痛みのように残るのがいとおしい。痛痒と紙一重の幸福だった。いつまでも残ってほしいと田代は念じた。年甲斐もないことをしたと思っているらしい山本は傍らに胡座をかき煙草をのむもう片方の手で自分の歯形の残るそこを撫でている。まだ熱の残る指先。爪を立ててくださればいいのに、と薄く開いた瞳のかすかな視線を投げた。膚に、血に、記憶を刻む。乱れた息づかいと、唸り声。痛みははなから痛みではなかった。神経を伝ったものはまさしく稲妻と思われた。それほどに痺れ、田代は悲鳴を殺したのだ。 「お前が人に見せることもあるまいが」 掌が押しつけられ親指の腹が撫でる。 「じき消える」 「勿体なく思われます」 「我が儘を言うな」 |