田代家のクラーク・ケント


「兄さんだって頑張ればクラーク・ケントみたいに格好良くなれるのに」
「ボディスーツなんか御免だよ」
「そうじゃなくて変身前の方」
「ああいうのが格好良いのかい」
「私は好き」
「努力しても役者には勝てない」
「もうちょっと着るものに気をつけたらっていうこと」
 これ、と千歳が差し出した紙袋は荷造りした記憶の中になかった。
「私と光信くんから」
「気を遣うなよ、子供のくせに」
「私アルバイトしてるのよ。兄さんより先に働いてるんだから」
 コートだった。その場で紙袋から出し、羽織った。
「似合う」
 千歳は小さく手を叩く。