月曜朝、指を折る夢
指を一本一本折って、骨を道しるべにする。夜の坂道に骨は青白く光る。鹿が食べなければいいのだが。 翌朝には両手がなくなっているだろうなので、覚えた言葉を胸の中で繰り返す。朝陽が昇ったらどうしよう。口に筆をくわえてしたためようか。あなたがいとしいと、坂道に転がる骨が転げながら音を立てた。 追って来ないでください。ただ、僕の帰る道筋を見つめてください。明日、また参ります。 目が覚めたのは目覚ましより一時間早い時間だった。田代は身体を起こし、冷たくひえた首筋を撫でた。手指の熱がじわりと滲む。熱い茶を淹れ、時計を見るに早いようだが既に明るむ街を眺めた。ベランダを開けると、ひやりとした空気が流れ込む。 夜明けの空に十本の指を透かして、見た。どこも欠けてはいない。だが中の骨はあの坂道に今も転がっているかのようで。陽が昇るまでその幻は在るのだろう。 田代は指を組み、ふっと息を吐いた。月曜が来る。不意にどこへ行くのも楽しみだった。歩いてよい。五月の香りが首の後ろに吹き抜けるのが心地良い。 明るくなってテレビを点けた。午後から雨になるだろうと言われた。傘を持って、教室に向かった。 |