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読書やビデオ鑑賞の中で、その気はなかったのにモヘた 結果の断片の諸々
本当に最初は健全だったんです! と言って何人が信じてくれるだろうか












『モーツァルトは子守唄を歌わない』原作版(森雅裕)・コミック版(有栖川るい)
名シーン、名場面、迷科白のご紹介(コミックス2巻)

主要人物は主人公であり探偵役を負わされるベートーヴェン(三十代)
ベートーヴェンの弟子で生意気盛りのカール・チェルニー(十八歳)
モーツァルトの不義の子、勝気な娘シレーネ・フリース(十八歳くらい)
あとは宮廷楽長サリエリや、若きシューベルトや、モーツァルト未亡人や…。

「先生はどちらへ?」
「あのヴェローナ出身者の所だ」
「サリエリの所ですか ついていきますよ」
「練習していろ」
「先生一人で大丈夫なんですか」
「心配してくれてるのか?」
「怒りにまかせてサリエリを刺したりしないでくださいよ
宮廷楽長殺害犯人の弟子だなんてことになったら 僕の経歴に傷がつきますから」
「おまえはピアニストなんか廃業してしまえ」

(コミック2巻、45〜46ページ/原作文庫、106ページ)
サリエリの圧力により、演奏会のメンバーが集まらなくなってしまった。
ベートーヴェンらがモーツァルトの死について探るのを好ましく思っていないのだ。
そこで、サリエリの所へ乗り込もうとするベートーヴェンのシーン。
しかしその直後、代演を用意しようとした支配人代理へ言い放った科白は格好いい。
「これは俺の演奏会だ そこをどきたまえ!」
コミックスでのこの直後のコマのチェルニーの瞳のアップが師への何かを物語っている
と思う。


「おまえたち うちの先生を殺ったな!」

(チェルニー、コミック2巻、61ページ/原作文庫、114ページ)

拳銃をもってサリエリの所に駆けつけたチェルニーの第一声。
こりゃねえだろ、と思うと同時に、こうとしか言いようもないよな、とも思う
なんとも味わい深いチェルニーの科白。
原作ではベートーヴェンが「これが愛弟子ね……」と呟いていた。


「これが鱒だと? ウィーンの人間は魚の区別もつかないのか」
「鱒ですよ」
「ヤマメだよ 似てるが味は大違いだ
鱒はうまく作ったソースとワインで舌をごまかしながら食うものさ
ヤマメは素焼きのまま味わえる魚だ」
「魚類学者先生 少しは身の危険を感じたらどうですか
持ってきたのは さっきすれ違った男ですよ」
「後で請求書をよこしそうな男だったか?」
「スウィーテン男爵に毒殺されそうになったばかりなのに
よく 見ず知らずの人間が持ってきたものを食べる気になりますね」
「この家では猫を飼っている」
「先生!」

(コミック2巻、81ページ〜/原作文庫、121ページ〜)
どこまで抜粋したものか悩むが、これまたコミック、原作、両作共に味のある場面。
留守中にベートーヴェン宅を訪れた謎の男がヤマメをプレゼントしており、
それを食べるの食べないのと師弟で遣り取りする。
原作では悩んだ末にチェルニーは「でも、それはあなたの役目ですよ」と渋々承諾している。
対してコミックスでは長い見詰めあいの時間にチェルニーが視線でメッセージを送っている。
いいんですか 毒が入ってたら猫は死にますよ
そうまでしてヤマメが食べたいと
意地汚い師匠で弟子は悲しいです
弟子の悲しげな視線に根負けした師匠は
「わかった 屋根裏でネズミでも探そう」
と折れてくれるのだが、直後、猫はベートーヴェンの摘んだ魚にジャンプし、指ごと魚を食べた。
この後のハゲのホルン吹きが勝手にお邪魔してヤマメを食べていたりと楽しい場面が続く。


「天の声かと思いましたよ」
「なるほど」
「神様にしちゃひどい声でしたけどね」

(コミック2巻、159〜160ページ〜/原作文庫、159ページ)
伝声管を使い、離れた場所から舞台のチェルニーに声を聞かせたベートーヴェン。
そのことに気づいたチェルニーのベートーヴェンに向かっての第一声。
原作では、ベートーヴェンがチェルニーの歌声を貶していたから
この勝負は五分五分といったところか。


「行ってみなきゃわからないっていうんですね」
「そうだ。行ってみりゃわかる。お前一人を行かせはしないさ。俺も一緒だ」
「身に余る光栄ですよ」
  (中略)
「ピアノを習ってる先生と屋根のぼりなんて、親に見せられた図じゃないな」
「何ならフンメルの弟子に復帰したらどうだ?」

(コミック2巻、164〜165ページ〜/原作文庫、161ページ)
屋根の上の像に秘密があるらしいので、日も暮れる時刻、屋根に上る師弟。
抜粋は原作から。
コミックスではフンメルという前の教師には触れず、他の教師につくか?
となっている。
わざわざ前の教師の名前を出すあたりが、妙に拗ねているようで、チョイス。


さあ2巻も終了だ。
→3巻へ続く