SLEEPING BEAUTY 2

 瞼などいりません、と言ったことがあります。
 誰に。神でしょうか。
 神を信じているのですか、という問いには、
 真実を信じているだけです、という答えしか私は持ちません。
 けれどもその造物主が、私を人の身体に作った。
 あるいは私の意識が、私に人の身体を与え、思考させた。
 この、人の身体が私です。
 瞼など、いりません。
 私は瞼でこの眼を覆う時間が惜しい。
 為されるべきことが目の前には山とある。
 私は百の腕を世界に伸ばし、千の眼で世界を見つめ、真実を掴み出す。
 私の眼は世界中の犯罪者を見つけ出し、私の腕は世界中の犯罪者に手錠をかける。
 私は、Lです。

 銀のスプーンを抓む、この指一つ、私の身体。
 私は一つではない。私には百の腕がある。千の眼を持っている。
 けれども甘いクリームをすくい上げ、口へ運ぶ、この指一つ。
 私の身体。
 これが私。

 瞼などいりません。
 私は見届けなければならない。
 これで終わらせてはならないのです。伝えたいこともあるのです。
 私自身の手で、ほら、今、私は真実を掴んでいる。

 瞼。
 ああ、この瞬間の為だけに。