衝動










 眠いのを誤魔化しながら、とにかく肉体的に煽ってやればそれなりの反応は示すもので郷田は緩慢な抜き差しをやめないし、仙道は浅く息を吐きながら枕に押しつけた顔を不機嫌そうに歪めている。けれども郷田はこのまま仙道が眠ってしまってもするだろうし、続けるだろう。とにかくやる。今夜はやる。このコンドームが尽きるまでやる。時計の針なんぞは見ない。互いのCCMもどこへ飛んでいったのかも、もう追っていない。今夜は一晩中溺れる、それだけだ。
 そもそも童貞もバックバージンも互いに捨てるのが早すぎたのだ。十代半ばと言えば余地もあるような耳の触りだが、実質中学生というものは未熟すぎた。肉体的にも知識の面でも曖昧なままとにかく突っ込み、突っ込まれ、本能で探し当てた快楽に溺れるうちに自分が大人になれた気がして。ちょうど郷田の心のど真ん中を占めていた人間がいなくなった時期でもあったから、郷田にとっては仙道がいいから、と言うよりも誰でもいい、仙道なら都合がいい、くらいのものだったのだろう。
 約束もなければ互いの感情さえ無視した関係だったので、郷田は仙道という男に限らず普通に女も食ったし、仙道は仙道で本来ならば捧げるべくもなかった処女を捧げた相手に操立てすることなく、他の人間に突っ込ませてはより自分が感じる快楽を追求し、しまいにそのことが発覚した時には郷田とのバトルはLBXのそれにとどまらず、ジョーカーを粉々に砕いた先の肉弾戦までもつれ込んで、これまた獣のように犯し犯された訳だが、そんな二人が揃いも揃ってエイズ検査に行く日が来ようとは当時の精神状態では想像だにしなかった。
 通知が来たのは今日の午後の郵便で、二人とも陰性である旨、ぶっきらぼうに見せ合ったものの、先に折れたのは郷田である。男泣きに泣いた。そして裸になる以外で初めて仙道は郷田に抱きしめられ、初めてコンドームありのセックスに臨んだのである。多分四、五時間前のことだったろう。



2012.11