ユメオチルユメ




 涙で滲んだ視界の中にアルフレッドがいて、何か言いたげな顔をしている。マシューはアルフレッドに向かって手を伸ばし、思いの外距離が近いことを知る。
 痛い。悲しい。唐突に思う。
「マシュー、動いてよ」
「…できない」
「だらしないこと言うな」
 マシューは首を振った。アルフレッドは笑顔で、それは夢の中の光景のように滲んでいた。どこかから射す日が床の上で照り返して、眩しい。両手で顔を覆う。残像が瞼の裏の闇から浮かび上がる。吹雪のように渦を巻く。
 夢みたいだと思った。夢かもしれなかった。彼はアルフレッドとセックスをする夢を見たことがあった。だから、これも夢かもしれないと思った。
「このままがいいよ…」
「マシュー?」
 仰向けになったアルフレッドの裸の胸に触れる。腹が柔らかい。泣きながら笑う。脚を開いてその腰の上に跨っているのが現実だとは信じられなかった。
「夢でしょ…?」
「夢?」
「夢ならこのままがいい」
 別々の身体を持って生まれた。この広い大陸にたった二人きりの兄弟なのに、アーサー・カークランドが引き合わせてくれるまで、その存在を知らなかった。こんなに似ているのに。鏡写しのような顔。神様特別のオーダーメイドのような、同じ声。
 下から軽く突き上げられる。口から漏れる高い声はアルフレッドのそれとの同一性から乖離する。僕の声はこんなに高かっただろうか。僕はこんな声を出すことが出来たのだろうか。
「マシュー」
 腰に手が添えられる。
「ほら、マシュー」
 嬌声をこぼしながら腰を浮かす。アルフレッドの手は、それを褒めるように優しくマシューの肌を滑る。





初米加。