Thank you your calling





 今朝から電話が混線している。ルートヴィヒに繋がらない。さっきはギルベルトに繋がった。近くはなった。その前は何故かマシュー・ウィリアムズに繋がってしまい、メイプルシロップを送ってくれる約束が成立した。更にその前はベールヴァルド。缶詰はいらないと断った。
 違う違う違う、食べ物の話じゃないんだ。ルートヴィヒと話がしたい。ルートヴィヒの声が聞きたい。気持ちの良い週末の午後だから、窓から吹きこむ気持ちの良い風を感じながらベッドの上でごろごろと、ルートヴィヒの声を聞いていたい。
 もう一度ダイアルし直す。アフリカにいるアーサーに繋がった。
「お願い」
 フェリシアーノは涙声で頼む。
「お願い、この電話をルートヴィヒに繋いで」
 アーサーは戸惑い、しかし少し待てと言ってくれる。電話が再び繋がる。アルフレッドだ。
 待ってなよ!とアルフレッドは言う。ヒーローに出来ないことなんかないんだぞ。
 再びのノイズの後、フランシスが優しくたしなめながら、次へ電話を繋ぐ。
 イヴァン。ライヴィス。ピーター・カークランド。
 世界をリレーする。
 ティノ。エドァルド。ヘラクレス。菊。
 電話が繋がる。繋がって、リレーをして、ぐるぐると地球を七回転半のスピードで走って。
『この馬鹿弟!』
 電話口で怒鳴る声。ロヴィーノが悪態をつきながら電話を繋ぐ。
 ノイズ。
 ふと耳元から砂嵐が消える。
『フェリシアーノ?』
 ルートヴィヒ、と呼びながら泣き崩れてしまった。
「あっ、あのね、俺、お前のこと好きなんだけど」
 涙で声が詰まる。相手も何故か動揺したらしく、何だ!と怒鳴りつける。
「ここまで来るのにすごく時間かかって、みんなが電話繋いでくれて、俺、お前のこと好きなんだけど!」
『だっ、だからどうした!』
「もっぺん、逆に電話繋いで! みんなにありがとうって言うから!」
 息を吸い、フェリシアーノは一気に言った。
「そしたら、お前の所に行って、直接会って、言うから!」
『……フェリシアーノ』
「好きって言うから!」
『解った! 解ったから大声で繰り返すな!』
「好きなんだよ!」
『繋ぐぞ!』
「好きだよ!」
『何言ってんだチクショー!フェリシアーノ!!』
 それから一人ずつにありがとうを言った。ありがとう、ありがとう。グラーッツェ。メルシィ。スパシーバ。サンキュー。サンクス・ア・ロット! ありがとう、ありがとう、大好きだよ。
 受話器を下ろす。日は真上に昇っている。フェリシアーノは慌てて服を羽織ると、外へ飛び出した。



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