「例えば僕に在り得る未来は…君をどこかほっといて…どこか置き去りにして…」
「ジョー」
「僕は君と幸せにならなくてもいいってことさ」
 まるでリアルな芝居のように言葉がきつく響く。
「そして君は僕と幸せにならなくったって…いいってことなんだ」
 触れ合い密着した背中なのに体温を感じない。ジョーの手を掴もうとした手が空を掻く。
ジョーの両手はスーパーガンをしっかりと握り締めている。
「ジェット、幸せになれよ」
 背中が離れる。再び燃え上がる火炎と、闇に潜む気配に、毎度毎度の心臓を掴むような銃声を
響かせながらジョーは言う。
「君の幸せが僕の幸せだとか、そんなオメデタイことは言わない。寧ろ胸糞悪い、正直ね。
でも、ジェット、幸せになれよ」
「何だよ、おい、ジョー!」
「幸せになれって…祈ってしまうんだ」





「ねえ、聞こえる?」
 上空から落とされた五十余の爆音が脳波の探索さえも妨げる。
「聞こえるか? 聞こえるかい、002!」
 ジョーは声を張り上げた。
「翻訳機を切ってくれ。頼む。僕の声が聞こえる!?」
 迫るミサイルに応戦する。再びの爆音と煤煙。人造の視界さえ遮られる。
 ジョーは固く目を瞑り、叫んだ。
「ジェット!」
 更に名前を呼ぶ。
「ジェット! ジェット・リンク!」
 脳内の回路が目まぐるしく働き、彼の脳波を辿ろうと懸命に電子が行き交う。
「聞こえるか? これが僕の声だ。島村ジョーの声だ」















 Say hello to 004 !


















 不意に愉快なように腹の底から笑った。


















2439年8月15日、午前0時。